- 2008/08/29(金) 12:04:59|
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『ニュー・ワールド』の舞台となるのは、17世紀初頭のアメリカ大陸北部。その地に、イギリスを出港した一隻の船が到着しました。彼らの目的は、新大陸を開拓して黄金を手に入れること。その船から降り立った冒険家、ジョン・スミスは、やがて一人の少女と巡り合います。彼女の名はポカホンタス。勇敢で希望に満ちたスミスと、美しくピュアなポカホンタスはたちまち恋に落ちますが、それは許されないものでした。自分たちの生活を守ろうとするネイティブ・アメリカンと、その地を開拓しようとやって来たイギリス人。そんな、言葉や文化以上の大きな壁に阻まれ、離ればなれとなる二人。そして…。
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この切ないラブ・ストーリーは、17世紀から400年もの間、アメリカで大切に伝えられてきた物語。もちろん、スミスもポカホンタスも実在の人物です。「新大陸」とはいっても、もともとポカホンタスらネイティブたちが住んでいた場所。そこを「発見」したというスミスたちは、見方によっては侵略者と言えます。互いに惹かれ合いながらも、立場の違いから引き裂かれなくてはならない二人…。そんな切ない心情が、圧倒的な映像美で賞賛を集める巨匠、テレンス・マリック監督の手によって描かれています。
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本作の見どころは、なんと言ってもその美しい映像。当時のままとも思える神秘的な自然に囲まれたロケ地は、まさに1607年にポカホンタスとスミスが出逢い、哀しい別れを遂げたヴァージニアでした。青々と茂る高い木々、清涼な水をたたえる湖、どこまでも広がる草原…。それらが映し出されるたびに、まるでスクリーンの中に吸い込まれるよう。その美しい自然の中で平穏な心を取り戻すスミス同様、観ているだけで疲れた心が癒されていく、そんな気持ちになれるんです。
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そして、この映像美とともに心に染みてくるのが、ポカホンタスと彼女を愛した男性たちの切ない想い。許されない恋が元で親子の縁を切られ、イギリス側へ人質として送られた彼女の姿に、スミスは心を痛めます。ポカホンタスの自由を奪ったのは自分…。そう考えた彼は帰国命令を受け、彼女から去っていくのです。それがすべて彼女のためと、自らの心を抑えて。
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愛するスミスを失った悲しみで、抜け殻のようになったポカホンタス。そんな彼女を救ったのは、イギリス人貴族のジョン・ロルフでした。妻と娘を亡くしていたロルフもまた、ポカホンタスによって心を癒していきます。ロルフの優しい愛に包まれ、やがて二人は結婚。息子にも恵まれ、穏やかな日々を過ごしていくのです。そんな時、スミスとポカホンタスは再び巡り合うことに…。
運命の人と再会したいという情熱と、夫の愛を失いたくないという気持ち。揺れ動くポカホンタスに、ロルフは苦悩しながらも彼女へ答えを委ねます。スミスの情熱的な愛、ロルフの深い愛情、そしてその間で揺れ動くポカホンタスの心。彼女の最後の答えを知った時、私たちは再び深い感動に胸を打たれることでしょう。
美しい映像と三者三様の愛の形って?≫
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『ニュー・ワールド』の魅力は、キャスティングにもあります。マリック監督の中では、ジョン・スミス役にコリン・ファレルを起用することは最初から決まっていたのだそう。冒険心に富み、エネルギッシュかつパワフル。そんな魅力でマリック監督を引きつけた彼こそ、スミス役には適任だった、と、プロデューサーのセーラ・グリーンも語っています。ポカホンタスへの熱い想いをたたえた眼差しやふとした仕草は、
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観ていて思わずドキドキしてしまうはず。
一方、ポカホンタス役に抜擢されたのは新人、クオリアンカ・キルヒャー。無垢な少女がスミスとの恋を知り、別れ、大人の女性として成長していく。その過程をたぐいまれな表現力で演じきった彼女は、ペルーのケチャ/ウアチャパエリ族の血を引く15歳の少女。当時は本格的な女優を目指してレッスン中だったそうですが、カメラ・テストでの圧倒的な存在感によって「新人」というハンデを乗り越え、大抜擢を受けました。スミスをまっすぐ見つめる情熱的で真摯な表情、そしてロルフや我が子に向ける慈愛に満ちた微笑み。どちらのキルヒャーも美しく深みがあって、新人とは思えないほどの演技力を感じさせてくれます。
温かな愛でポカホンタスを包むジョン
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・ロルフ役は、クリスチャン・ベールです。彼もまた、実力派の若手俳優として脚光を浴びている存在。スクリーン上で彼は、ロルフの善良さや高貴な心を表現しています。スミスのようなワイルドさはなく、ただひたすら紳士的なロルフ。でも、その優しさでポカホンタスを癒していくというキャラクターを、ベールは見
世界でもっとも美しい人:ラニア王妃
歴史の中では「運命の美女」というような人が出てきます。もしかしたら、ヨルダン王妃のラニアは21世紀の運命の美女じゃないかと感じられてなりません(スライドショー参照)。米国ピープル誌が選ぶ「世界でもっとも美しい人」にも当然選ばれるほど、
西班牙昆虫粉
女優さんかな?と思うほどの綺麗な人です。
彼女はパレスチナの名門、英雄ヤシン家の出身。国民のほとんどがパレスチナ人であるヨルダンでは、ものすごいカリスマ的存在です。実際、彼女はロイヤル・ファミリーのセレブとしては世界的にも人気が高い。彼女がカルティエのダイヤたっぷりな時計をしているのを見たとき、あぁ、やっぱり生まれが高貴で美しい人は、ダイヤに負けないなぁって思ったものです。
しかし、ヨルダンという国の政治的な難しい立場を考えると、余計に名門パレスチナ人家庭出身である彼女が、国王に見初められて王妃になったというのは、やはり運命的に感じられます。では、そんなヨルダンのギリギリな政治的状況をかいつまんで見てみましょう。
□石油が出ない!
ヨルダンは、石油が出ないんです。収入源なんて、死海の観光収入や、リン鉱石などくらい・・・アメリカの援助にとても助けられているところがあります。
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アメリカはイスラエルと仲がいい。だから、アメリカと仲良くしていくためには、イスラエルとも友好関係を保たないといけない。実際、今の国王アブドゥラのお父さんなんて、アメリカ人のお嫁さん(ヌール王妃)をもらってたこともあります(フセイン前国王は奥さんが亡くなるなど、計4回結婚していて、アブドラ国王は2番目の奥さんの子供です)。私の師匠も、アメリカの国のプロジェクトでヨルダンの首都アンマンの研究所にいました。そんなこんなでアラブ諸国の中でも、とっても新米国です。
ちょっと待ってよ、でも石油が出ないなら、どうしていたの?ヨルダンは石油面では、実はイラクに頼りっぱなしだったんです。そう、あのアメリカと仲が悪いイラクですよ。
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そしてね、忘れちゃいけない。パレスチナ人とイスラエル人は仲が悪い!殺し合いをずっと続けてる!!ね?ほら、超微妙な状況でしょう?
ヨルダンの国王っていうのは、ものすごい政治バランスをとらないと、いつ何が起こるか分からない場所ってこと・・・
きついですよね。
パレスチナの名門の出身でしかも美しくて、慈善事業にも力を注ぐ王妃は人気者。だけど、そういうパレスチナ魂が強くなりすぎるのも、イスラエルとの関係悪化を呼び・・・アメリカとの関係にもヒビが入る。私だったら、絶対こんな難しい立場で王様なんてなりたくなーい!
□“西洋的”なヨルダン
偉哥三鞭
前回お話したシリアに比べると、良い悪いは別として、ヨルダンは“西洋的”。町並みも、ローマ時代の円形劇場の近くに、ケンタッキーフライドチキンの看板があったりする。街そのものも、もっと都市っぽい。観光客の目からすると、どこにでもあるヨーロッパの町みたいで、面白くないんだけど、でも生活する人たちにとっては、便利なんじゃないかな?
OB蛋白それだけ、ヨルダンは西洋諸国とも「共有」している部分があるし、シリアよりは西洋人との「付き合い方」を知っているのかもしれない。でもその分だけ、アラブ的なものや、ヨルダン的なものを失っていくのかもしれない。日本なんかも同じような問題を抱えているでしょう?西洋化するのが、絶対にいいことなのか、日本的なものを残すとしたら、何が日本的で、どういう形で残していくのがベストなのか・・・非西洋諸国すべてが模索していく道なんでしょうね。
ヨルダン人で、アメリカのフロリダ大学修士をとっている人と現地で話し込む機会がありました。それは、アメリカ人たちと一緒に行ったペルシャ絨緞の店でのこと。私はミントティを飲みながら眺めていたわけ。
私「アメリカ人がペルシャ
唯美OB蛋白
絨緞を選ぶとき、あれ?趣味悪〜いって思うことない?」
エリアス「そりゃあ、思うよ。われわれとは違う観点で・・・つまり我々にとっては趣味が悪い品を喜んでいるように思う」
私「ああ!やっぱり!日本でも同じことよ、アメリカ人観光客が喜びそうなもの、というのは日本人にとっては、ちょっと悪趣味なもの、美意識の違いを感じるね」
エリアス「そういう意味で、僕たちアラブ人は日本人の美意識とか、考え方のほうがシンパシーを持てるね」
私たち日本人は、アラブ人とも案外共有できるものをたくさん持っているのに、機会を持たないだけかもしれない、と思ったエピソードでした。
威猛酷哥
ちなみに、余談ですが、エリアスとはこの後、美意識についての話になりました。どういうのを綺麗と思うかというと、やっぱり「ほかの人種の女性も綺麗だと思うんだけどね、自分の相手となるとやっぱり、パレスチナ人かエジプト人」なるほど、私たちには似たように見えるアラブ系だけど、違いがあるんだなと思ったのでした!
■シリア関連のニューズ画像のスライドショー■
「ファースト・レディの顔〜シリア・アラブ共和国〜」
リンク先の画面の写真をクリックするとスライド・ショーが見られるよ♪
威哥王
中東地域というのは、イメージ先行で実体があまり知られていません。イスラム?紛争地域?それくらいは誰でも分かる。でも、例えばよく耳にする『イスラム原理主義』という単語が、アメリカ人がキリスト教の用語から付けた『俗称』であり、そんな組織も単語もイスラム圏には存在しない、ということを知っている人となると圧倒的に少なくなるでしょう。
そんな中東の中でもマイナーといえるシリア・アラブ共和国とヨルダン・ハシミテ王国をあえて選んで、2回にわたって見ていきたいと思います。どちらの国も、日本で言うと奈良や京都にたとえられるような、世界でも最古の部類に属する洗練された文化を持っているという点に注目です。
■シリア・アラブ共和国って?
威而柔 VIAZOME
シリア・アラブ共和国という名前は、日本人にとってまったく馴染みもなく、そもそもアフリカなのか南米なのかも想像がつかないくらいでしょう。実は、中東。しかも、何かと物騒な話題のイスラエル、イラク、レバノン、ヨルダンと隣接している国なんです。
そもそも身近にシリアのものなんてない!って思うでしょう?
たとえば、最近ならバス・グッズなどの売り場に行くと、四角いオリーブ石けんを売っていますね。よく見ると、シリア第二の都市アレッポ産なんです。
・食べ物
天仙丸7号
他にも、日本人の心をくすぐりそうなものは沢山あります。食事は地中海系で、かなり美味しい!ギリシャで食べるような、ブドウの葉でクスクスを包んだものとか、ナスをグリルしてペースト状にし、ゴマと混ぜたババガヌーシュは香ばしくて私のお気に入りです。シシカバブは当然ながら、串焼き感覚で日本人の味覚にもバッチリ合います。スウィーツは、ピスタチオを使った小さいパイのようなものがおススメです。
三體牛鞭
・観光
実は石油が出ないシリアにとっては、観光収入は大事!
そして、イタリアやギリシャと比べても、遜色のないスゴイ観光地スポットがたくさんあるので、後ほど2大巨頭のダマスカスとパルミラについて詳しく紹介しましょう。
・お土産
女性にとっては、石鹸もそうですが、シリアの国花は黒バラで、バラのジャム(本当に美味しい!)やローズ・ウォーターなども心をくすぐるアイテムです。そもそも、ブルガリアのダマスク・ローズが有名ですが、それもシリアの首都ダマスカスが語源なんです。また金が安いので、アクセサリー好きが買い物するにもうれしい場所ですね。
三便宝
■シリアの政治情勢
そんな気楽な話ばかりして、実際、政治的に緊張が走っている場所だろう、と思うでしょう?モチロン、日本よりは政治的緊張にさらされているといえます。内政面では、2000年に就任したアサド大統領(父親の死去にともない、政権委譲)の独裁政権ということになっていますが、どうやら権力の委譲は完全ではないようで・・・国際派だった父親の時代に日陰の身だった保守派が台頭しているようです。たとえば、今の駐在日本大使は前大蔵大臣・・・どうやら国際派の人たちが苦しい立場にあるのが現状の模様。大統領自身はロンドン大学の医学部出身、夫人もロンドン生まれ。
片仔廣
世界的に見ると、やはり国際派が台頭してくれるほうが、安心ではありますね、当然ながら外国との関係を大事にしようとしますから。それに対して、保旧派は対外的にはタカ派であり、昨今のシリアの危険な雰囲気はそのために醸し出されているともいえます。最近任命されたシャラ副大統領が父親の時代の国際派なので、少し変わるかもしれないと言われています。
曲美
テロリストたちはいないのか?!と心配される向きもあるでしょう。イラクと国境を接しているのだから、入国してきてテロを働いたりしないのか?!と思うかもしれません。幸か不幸か、このような独裁政権のもとでは、危険分子は早い段階で摘みとられます。ですから、ある意味、テロリストは彼らに対しても穏健な態度の比較的「政治的に平和」な国・・西ヨーロッパやアメリカ・・での活動のほうが活発だったりする皮肉な面があります。
■「危ないんじゃないの?」
男用99神油 早漏改善
9.11のテロ直前、指導教官とぐるっと一周、そして来年はじめには分布調査にちょこっと参加させていただく予定。怖くないの?危険じゃないの?外務省の海外安全ホームページによると(2006年12月11日現在)イラクとの国境付近「渡航の延期をお勧めします」、上記以外の地域「十分注意してください」。
十分注意が必要なようです・・・。
う〜ん、でも、どこもかしこもテロの危険に満ちていて、住民が常に生命の危険にさらされて過ごしているのか、というと・・・疑問です。
■「伝えられる危険」と「現実の危険」との間の歪み
男露888
日本にいると、どうしても理解できないのが、他国の危険の度合い。私はアメリカのテキサス州オースティンに7年半住んでいました。街の35号線の東半分は渡航延期を勧める必要があるほど、年中24時間危険(いつ撃たれるか分からないほど)なので普通まともな人は近づきませんが、北西部は日本の田舎町くらい安全。しかし、本やニュースで「オースティンが危険」などと伝えられたことがあるでしょうか?
これは必ずしもシリアが完全に安全という意味ではありませんが、ニュースなどで想像するようなのとも違うんです。これは、私が一緒に仕事をしている人が、来週シリアに行くので、状況報告を追ってアップデートしたいと思います。実際のところ、国境付近以外は、問題なく安全です。(財布丸出しで路上で寝ていても平気、という意味でもありません)
■首都ダマスクス(旧市街地は世界遺産指定)
男宝
現在シリアと呼ばれる地域そのものは、先史時代からの遺跡も豊富で、バビロニア王国(紀元前2000年紀)を作った人々ももとはシリア地域出身と言われています。
首都ダマスクスは、ヨーロッパでこれほどの文化遺産を持った場所を探せば、ローマしか見あたらないほどに、歴史のミルフィーユのような場所。
ウィキペディアの「ダマスカス」より
私の中でシリアとは、危険と言われていた時期でも「中世そのままの、おとぎ話の世界」。夜になれば、町中のモスクのミナレットが緑に光って、エメラルドだらけの万華鏡を見ているみたい。そこに歌うようなお経が聞こえてきて・・・もう、アラビアンナイトの世界!
魔根・ウマイヤ朝(661年―750年 日本の奈良時代くらい)
イスラム最初の王朝「ウマイヤ朝」の首都であり、世界最古のモスク、モザイクに彩られたウマイヤ・モスクがあります。そこは歴史的遺物ではなくて、今でも敬虔なモスリムが通い、祈り、交流する場所なんです。絨毯をしきつめた、広々としたゆったりした空間に入ると、モスリムでなくても落ち着いた気分になれました。ここには、洗礼者ヨハネの首塚もあります。
ウマイヤ・モスクを中心にスーク(市場)があり、石畳の細い通りの両脇にはスパイスを売る店の香り、ロバに荷物をひかせる少年、有名なアイスクリーム屋さんの前では行列も!「お腹を壊すかもしれない」とシリア人に止められましたが・・・。とにかく、すべてがまるで中世の躍動感を伝えるようで、エキゾティックでドキドキさせてくれます。
魔根
・アイユーブ朝(1169年−1250年 日本の鎌倉時代くらい)
ダマスカスは、十字軍撃退の英雄サラディンのアイユーブ朝の首都でもありました。サラディンの廟は今での多くの人が観光に訪れています。
ウィキペディア「古代都市ダマスカス」より
ダマスカスは、ほかの中東の都市と比べても比較的西洋化が進んでいないので、いい意味で昔の町並みがきれいに残されています。歴史的な町並みの中に、欧米のファスト・フード店などが姿を見せるような無粋なことは起きていません。
デモが起きたり、政治的に過激な情景ばかりがメディアに出ていますが、同時にこの街はこんな中世そのままの顔も保っているのが面白いところです。私はダマスカスにはアメリカ人たちと一緒に行ったのですが、全員「こんなにキレイな場所とは想像もしていなかった」と驚いていました。さすがに私も、今ならアメリカ人と一緒に行く勇気はありませんが・・・
■服装について
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・スカーフ
イスラム圏では女性は絶対にスカーフで頭を隠さないといけない?と思うかもしれませんが、シリアの場合は外国人は平気です。また、イスラム教徒の女性でも非イスラム教徒ばかりの場所では、スカーフをしていないこともよくあります。ちなみに、駐日シリア大使夫人はしていませんでした。いわゆる上流階級の人たちは西洋化されていて、自国の外ではほとんどスカーフをしないようです。シリアを含む多くのイスラム圏の国で、外国人や非イスラム教徒はスカーフをしていません。もちろん、したかったらしてもいいんですよ。でも、スカーフをしている理由だの、していない理由などを聞いたりするのは、宗教上の理由などもあるので、避けたほうがいいでしょう。
男性のするカフィーヤというスカーフですが、夏の暑い時期、砂漠ではアレがとても役立ちます。ちなみに、赤と白のチェックはシリア人やヨルダン人などが使用するので、テレビで見かけたら「あの地域だな」とアタリをつけてください。
麗姿
・女性と男性の服装
シリア人の道行く人は、男性は普通に西洋風。いわゆるカフィーヤをしている人は基本的には見かけません。女性もスカーフをかるく巻いている以外は、普通に西洋っぽい。実は、何より驚いたのが、男性が友達同士で腕を組んで歩いている姿。びっくりしました。あちらでは自然なようです・・・
観光で訪れる女性は、ミニスカートなどは絶対に避けた方がいいでしょう。「うわぁ、やっぱり中東って難しい」って思うかもしれませんが、そんなの、昭和初期の日本人だってミニスカートなんて履かなかったんですから、中東の人の感覚がヘンなわけでもないでしょう。今だって、葬式とかにヘソ出しする人は非常識だと思われる感覚に近い、本来はたしなみの延長じゃないかと思われます。あと、満員電車に乗るときはミニスカートは危険、というのも似ているかもしれません。
狼1号 狼一号
・モスクでは
モスクに入る際には、男性でも短パンはNGです。何も女性にだけ、保守的な服装を強いるわけでもないんですよ。「じゃぁ、モスクに入れないや」というご心配は無用!観光客には身体を覆う薄いコートを貸してくれるんです。
■シルクロードの薔薇、オアシス都市パルミラ(世界遺産)
一応紹介したいのが、最大の観光地でもあり、シリアの目玉でもあるパルミラ。
世界遺産にも登録されています。ローマ時代の遺跡で、女王ゼノビアが君臨していた小国です。
こんな場所がシリアには沢山あるんです・・・万が一、シリアが戦争に巻き込まれたりしたら、どれだけの人類の遺産が危険にさらされるだろう、と考えると夜も眠れません。
■シリア人気質
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気質は・・・中東といってもいろいろあって、堅い印象のイラク人に比べると地中海気質?時間はわりとゆっくり、日本人からするとちょっとノンビリすぎるようにも思われるほど・・・これは、トルコ人やペルシャ人ともまた違った独特の価値感。
石畳の小道を歩いていると、日向ぼっこ中のおじいさんにお茶でも飲んでいくか?と言われて甘い美味しいミントティをご馳走になったこともあります。なんだか、ほのぼのしていました。
また意外にも、シリア人は陽気でダンスが上手♪しかも、ラテンっぽく腰をセクシーにくねらせる系のダンスが上手なんです。パルミラで現地の男性2人に誘われてダンスに行きましたが、あんまりにも上手でびっくりしました。
そういうのも、あまり知られてませんよね?
過激な場面ばかりの向こうにいる、穏健な普通の人々の平穏な日常、想像するのも難しく、知ることもないものです。そんな無関心や知識不足が、やりきれない暴力の連鎖に、間接的に影響を
韓国痩身一号
与えているのではないか?と思えてならない日々です。
私が書いていることが全てではないでしょう。そして同じようにニュースが全てでもありません。物事や事実がプリズムのような立体だとしたら、それをいろんな角度から見ることで、より「ありのまま」を知る手掛かりになることと思います。その、視点のひとつになればと願い、これらの国に対して、ほんの少しでも、偏見が減り身近に感じられるようになるといいと思っています。
ヴェスヴィオス火山の噴火で、紀元一世紀のローマが
まさにフローズンされたように残された結果
お堅い連中が情報を作為したら
残らなかったかもしれない情報がたんまり残りました。
売春宿。
明治村の村長?に就任した小沢昭一さんが言ってました
「遊郭がないのがおかしい」
確かに、明治時代だの大正だのの古きよき建物を残すとしたら
遊郭を無視はできないはずです。
キレイ事しか言わないのだったら、
液体媚薬-花之欲歴史も民俗学もクソ食らえになってしまいます。
一面からしか光が当たらなかったら
分からなくなることが沢山あります。
人だって、口下手だけど心優しい人が、無口でしかめっつらだった、という情報だけ残されたんじゃ、とてもじゃないけど、その人の人となりを掘り返すことは難しいように、社会にも光も闇も、饒舌な部分も、寡黙な面もあるはずです。
そういう意味で、風俗(色も含めて)関係というのは、とかく隠蔽されがち。
江戸時代の文化にしたって、文献ではいろいろありますが、遊郭跡の発掘なんて、聞いたことがありません(寡聞にして!)建物の保存だとかも、いろんな意味で難しいようです。大阪かどこかでは今では鍋なんか出す店になってるところもあるようですが、基本的に、衰退しながら、消えていくもの。でも、これが、江戸時代のどっかの街が突然、火山の噴火でスパーンと残されていたら?
液体媚薬-花之欲
ふんどし一丁で逃げ出す野郎や、張り見世で格子に手を突っ込んだ旦那なんかが、そのまんま残ってたかもしれないわけです。
ただし。そういう秘め事は、いつの世にも、秘め事のままで置いておくのも、一面、良いところもあるとは思うんですね。なんでも開けっぴろげじゃぁ、それはそれで、時代の空気の再現はままなりません。そのサジ加減が、学問の妙というか、こうなってくると数奇の妙かもしれません。
そういう生々しい歴史の一部分が残っているポンペイやヘラクラネウム。
3Gでもその生々しい感じが再現できてるといいな!
歴史がちょっと身近に楽しく感じられるでしょう?
華佗壮陽丹
ちなみに・・・ヴェスヴィオス山の噴火当時、ローマ皇帝はヴェスパシウス。
以前にも書いたかしら・・・よく学生さんがテストでは
「ヴェスパシウスが噴火したとき」と皇帝を噴火させてしまうことがあるんですが、あんまりかわいそうで点数をあげたくなるものなんです。
- 2008/08/26(火) 13:17:55|
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<俺にとってつらい事、それは司、おまえを失うことなのです。>
蟻力神
わ、私を失うこと!?
うわぁ、自動作成って分かってても、コレは照れる!! 真っ赤になる!!
ドキドキするって言ったマサミ君の気持ち、分かるよー!!
うー…恥ずかしい……家で良かったよ。コレ学校だったら中根君にばれてからかわれてたよ絶対!!
<凄いねコレ、めちゃくちゃドキドキしちゃったよー!!>
恥ずかしくて、それしか返事が出来なかった。
マサミ君のバイト先の定休日、久しぶりにデートした。いつもとあまり変わらない城波駅付近でのデート。お互いに家が近いから良かった…ちょっとした時間でも会える。
いつも会えなくってゴメンって…マサミ君は言ってくれた。
うん、寂しい……。ホントは寂しい。
だけど、マサミ君がそう思ってくれてるのが嬉しかった。
気になってたこと……聞いてもいいかなぁ。
「マサミ君、聞いてもいい?」
「なんや?」
三便宝
「前の彼女ともこんな感じだったの?」
マサミ君はちょっと驚いたように私を見た。不安な気持ちでいっぱいで、私は多分そんな表情に今なってると思う。
「美代子とは……定休日でもあんま会わなんだなぁ。話してなかったか…俺美代子から告られてんねん、一緒におれば好きになるやろって思うて付き合っとったんやけど。結局別れるまで好きにはなれへんかった。せやからかなぁ……休みの日に会おうとかあんま思わへんかったんや。全然会わなんだわけやないんやけどな」
「……そうなんだ」
会ってなかったんだ……それってぜんぜん好きじゃなかったんだ……。
…私も…そう思われちゃうのかなぁ…。
そう思っていたら、マサミ君が私に近付いてきた。耳元の口を近付け、間近にマサミ君を感じてドキドキした。
「せや。けどな、おまえはちゃうねん……おまえは迷惑かもしれへんけど、俺毎日でも一緒におりたいんや」
毎日でも…?
五便宝
それって……。
マサミ君を見たら、ちょっとだけ頬を赤くして私を見て笑ってた。それを見たら私もえへへと笑う。
もう……マサミ君って嬉しいこと言ってくれるんだから!
でもできたらここでキスとかしてくれたらもっと嬉しいんだけどなぁ……。
そ、そうか!!」
その手があったか!!!
思わず中根君の腕を掴んだ。
「ありがとう中根君!! それは思いつかなかった!! さすが中根君だね!!」
その言葉に中根君は苦笑していた。
思いたったが吉日!! 私は学校が終わると大急ぎで家に帰った。電話帳を開いて電話をすると、女の人が出た。
「あの、バイト希望なんですけど店長さんいらっしゃいますか!?」
『はい、お待ち下さい』
VigRx
そう言って保留音が流れる。ちょっと待っただけですぐにその音は切れた。
『もしもし?』
「あ、あの店長さんですか? 私栗山と言いますけど、今そちらでバイト募集していませんか?」
いきなりの申し出だったから断られるのは覚悟の上だった。けど。
『あぁ、ちょうど辞める子がいるんだよ。一度履歴書持って来てくれる?』
あっさりと言われて逆に拍子抜けした。伺う日にちと時間を決めて電話を切った。
次の日休日だったので指定されたオープン時間に出向いた。マサミ君は今日は午後からだって言ってたから、会わずに済む。
店長さんに会って話を聞くと、時間が半端で短いうえに時給はあまり高くないと言われた。
うん、確かに680円は安いけど、そんなもんじゃないかなぁ? それに半端でも何でもいいのよ!! 私は小遣い稼ぎよりもマサミ君といることがメインなんだから!!
あ、いやちゃんと仕事はするけどね。
家も近いせいか、私はあっさりと採用されてしまった。代わりの人がすぐにでも辞めるらしいので明日からでも今日からでも良いから来てくれと言われたので、一度帰って今日から入ることにした。半端な時間でも土日とか休みの日は午後からとか長い時間入るみたい。
巨人倍増
やったね!!
とりあえず私は中根君に成功の報告をした。すぐに<よかったのぅ>と返ってきた。
うん、良かったよ!! これから帰りは一緒の時間になれる!!
うきうきしながら家に帰った。
そして数時間後、再びお店に向かった。渡されたエプロンをすると店長さんが私を促した。
「今いる子に紹介するからちょっと来て」
「はい」
ビールを積み上げている、いつも見る茶色い頭の少年の元へ向かう。
「正津君、新しい子紹介するよ」
「あぁ、はい」
そう言って振り返ったマサミ君が
RU486
私を見て目を見開いた。
「なっっ!! おまっっ!!!」
「こんにちは、栗山です〜宜しくお願いしますっっ!!」
この驚く顔が見たかったんだなぁ…♪
それ以来、勝と悟は逢わないまま月日は流れ、一年という歳月が過ぎた。だが、何の予告もなしに悟がふたたび現れた時は、それこそ地獄の絵図だった。
それはよく晴れた五月のある日、自慢のクルマで高見智子とドライブデートをしていた時だった。行先は国道を北上して、隣県の海岸国定公園へ……
県境を越えると、日本海の静かな水平線がパッと眼の前に拡がる。
婚約を誓い合って以来、彼女とはよくデートを重ねたが、隣県へ行くのははじめてだ。以前、一度電車で行ったことはあるが、社会人となって五年、一度も行かなかったのは仕事が忙しかったのと、クルマをまだ所持してなかったためだった。クルマを購入したら、
MaxMan
必ず行こうと約束して今日に至ったのである。
海岸国定公園内駐車場でクルマを停め、散策道、自然歩道をふたり並んで歩く。E岬の灯台が見えた所に、日本海の展望がパッと開けた。切り立った断崖の先端には、少しばかりの観光客でにぎわっている。もちろん落下防止のため、柵を張り巡らしている。眼下に見る日本海は、無数の大小さまざまな岩石が浜辺の近くに、位置まばらにそびえている。その上を、無数の海鳥たちがたわむれていた。
「何考えてるの。勝?」
そんな風景をながめていた勝は、ふいに彼女から声をかけられた。いつしか「市田くん」から「勝」と呼び捨てされている。
「いや。久し振りに見る日本海は、どことなく静かだなァ、と思ってね」
「あたしははじめてだけど。ねぇ、勝は誰と一緒にここへ来たの。また、それはいつのこと」
すぐには答えなかった。しばらくして、
威哥王
「弟とふたりで、冒険ごっこみたいな遊びをやってたんだ。そうだな。僕がまだ中学生だったから、今から十年ぐらい前かな。電車で見知らぬ場所へよく行ったものだ。それがこの電車はどこへ行くんだろうと興味半分になったら、日本海が見えたので、その駅に降りてここまで来たことがあったんだ」
「そう。無邪気な遊びだったのね」
実際、弟・悟はその時十歳、まだ小学五年生だった。その幼い弟がE岬の先端に立って日本海をながめた時につぶやいた言葉を、今でも忘れない。
「愛は、一面の海のようだ。心だって……」
それは何を意味するのか、当時はわからなかったが、子供の発想だろうとたかをくっていただけだった。
天天素
「ねぇ勝。その弟さん、今どうしてるの。まだ学生さん?」
まだ考えている勝の顔をのぞき込むように、彼女はたずねた。
「去年就職して寮に入ってるので、あんまり逢えないんだ」
「そう。勝の家族ってお手伝いさんだけみたいね。あたし一度もお父さんと弟さん、逢ったことないわね」
「いつか逢わしたげるよ。結婚式の時に」
実際あんなことがあって以来、一年以上も弟には逢ってない。何をしてるのかも……
だが、今は弟のことなど考えたくない。想い出すのは、あのいまわしい夜の出来事だ。男とおとこのいやらしい肉体関係
曲美
まだくちびるという一部だけだったが、それでもやはりショックは大きい。もし自分が女だったら、獣のような男に犯されたとしたら、やはりそのショックは大きいのだろう。そして必然的に、死を選んでしまったのかも知れない。
五年前、まだ新人OLだった彼女はその屈辱から死を選び、それでも死に切れなかったのだから、どれほどか辛かったことだろう。
だが今は何も考えまい。こうして彼女とは、結婚まで約束して幸福にひたっているのだから……
しかし、そんな倖せもつかの間だった。突然、不幸が訪れたのだ。<あいつ>だ。あいつがふたたび現れたのだ……
勝と智子が散策している間、歩き疲れたのか、
cialis……彼女は休憩できる場所を探していた。
「ねぇ勝、ちょっと休憩しない? あたし、ちょっと疲れちゃった」
「ああ。じゃあ、そこで休憩するといい。あ、僕はちょっと小便に行ってくる」
「ええ」
勝はそこに見つけた石造りのベンチを教えると、近くにあった公衆トイレへ行こうとした。この、彼女のそばから眼を放した間での出来事を、勝は気づきもしなかった。ずっと監視していたわけではないので、知らなかったのも無理はなかった。
トイレへ行こうとする勝のうしろ姿を見送った智子が、ベンチへ座ろうと歩き出した時のことである。彼女のほかにそのベンチに腰かけようとした者もいて、もう少しで鉢合わせになるところだった。
「あら、ごめんなさい。どうぞ」
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それは髪を背中まで長く垂らした、若い女性だった。色の濃いサングラスをかけ、若草色のワンピースを着ている。背が高いその女性は、智子の顔を見るや、ちょっと不思議そうな表情をした。以前に逢ったことがあるらしかった。智子は女性の視線を気にしながら、
「いえ。あたしは構いませんから、どうぞ」
お辞儀して、その場を去った。それをサングラスに隠れた瞳で追う女性は、やがてトイレから出て来た勝を発見するや、大きく驚いた。
手をハンカチで拭いた勝は、近づく智子を見て、
「どうしたの。ベンチに座ってればいいのに。あぁ、先客がいたのか」
ベンチの所を見やった勝の視線とぶつかった女性の胸中は穏やかではなかった。
motivat
勝は首を傾けた。その顔に見憶えがあったからだ。顔の輪郭、サングラスに隠れた眼、鼻、口の形……
勝は記憶の引き出しの中から、その顔と名前を捜した。あの娘でもない。この娘でもない。小学校、中学校、高校、そして同じ会社のOLまで、それぞれの顔を浮かべてみても、なかなか一致できなかった。
「勝。どうしたの。あの人、ご存知なの?」
勝の異様な眼差しに気づいた智子が声をかけた。ハッとして勝は一歩踏み出し、女性の前へ行こうとした。
「勝……?」
そう呼び止める智子の声を聞き流しながら、勝は歩く。女性の顔が間近になった時、勝の足が止まった。しっかり見定めた瞳がだんだん大きくなった。
「……!」
声にならない叫びを出しそうになった勝の眼は、まじまじと女性を見つめるばかりで放そうとしなかった。女性の、いや、女性と思われた人物の口もとに、不気味なうす笑みが浮かんだ。その顔こそ、勝にとって忘れもしない忌まわしいものだった。
「ま、まさか、さ、悟?!」
SPANISCHE FLIEGE
なんと、それは弟の悟だったのだ。
「しばらくね。まさか来てらっしゃるとは思わなかったわ」
これが、あの内気だった悟の言葉か!
「あちらにいる方、婚約者でしょう。ご紹介してくださらない?」
悟は勝の後方に控えている智子の姿をいちべつして言った。勝は背後を振り返って彼女を見た。紹介していいのかどうか、迷っている。事情をよく知らない彼女はためらいがちに近づいて来た。
「勝。お知り合いなのね?」
「あ、あぁ……」
どもりながら勝の額は、冷や汗でいっぱいだった。今、この場でふたりを逢わせていいのか、と勝は迷った。何かおそろしい予感がするのだ。おそろしい予感が胸をかすめてくるのだ。
なかなか紹介しそうにない勝に代わって、悟がサングラスを外して名乗り出た。
K-Y
「こんにちわ。わたくし、真木さとみと申します」
そう言いながらハンドバッグから一枚の名刺を彼女に渡した。
「あ、どうも。あたし、高見智子です」
名刺を受け取りながら、
「あいにく、名刺なんて持ってませんので」
「あら、いいんですのよ。おかまいなく」
眼の前にいる人物を、本当の<女性>だと思い込んでいた智子は、名刺を見てビックリした。
「え、じゃあ、男の方?!」
「ええ」
智子の手に持った名刺を、横から勝は盗み見た。
ニューハーフクラブ『トランプ』
ダンサー兼ホステス
真木さとみ
VVK
勤務先 ○□◇△
住所 ▽◇◆★
自宅 △◇□○
――真木さとみ……? それにニューハーフだと……
いったいいつから、悟は<性転換>したと言うのか……
異様なほどに、悟の言葉使いも動作も女性として洗練されたものだった。
名刺を見ている勝の視線に気づいた智子は不安そうだった。
「どうしたの、勝。顔色が真っ青よ。具合でも悪いの?」
「あぁいや。何でもない。ちょっと疲れたんだろ」
智子が何か言うより先に、悟の、いや真木さとみの言葉が出た。
「あら、じゃあご遠慮なさらずに、どうぞ、お座りになって」
と、脇のベンチを示した。
「それではわたくし、失礼します。ご機嫌よう」
真木さとみはお辞儀して立ち去ろうとした。
「ま、待ってくれ」
突然、勝が呼び止めた。不審がる智子の視線も気にせず、真木さとみは振り返った。
男宝
「……何か」
兄と弟の再会の場面だと言うに、まるで他人のように振る舞う弟の変わり果てた姿を気にしながら、勝は言葉をかけた。
「元気だったか。ここへは旅行で来たのか。宿はどこに泊まってる。久しぶりに逢ったんだ。ゆっくり話でもしようじゃないか」
まるで懐かしい友に逢ったような口ぶりの勝を、横から眺めている智子の胸中は騒いでいた。それは<しっと>に似た感情だった。取られないようにするかのように、智子は勝の腕を組んだ。勝は悟に言った。
「あぁ。紹介が遅れたけど、こちら僕のフィアンセなんだ。近い将来、お姉さんになるのだからよろしく頼む」
――えっ?
狼1号
一瞬、智子は自分の耳を疑った。お姉さん?
「じゃあ、こちら、弟さん?」
智子は勝から真木さとみの方へ向いた。ちょっと複雑な表情だ。
「改めて自己紹介。はじめまして。高見智子です。よろしくお願いしますね」
智子はていねいに頭をさげた。真木さとみも返す。
「こちらこそ。でも智子さん、はじめまして、と言いましたわね。でもわたしたち、以前に一度、逢ったことがありますわ」
「あら、そうだったかしら。ごめんなさい。うっかりしてて。どこで逢ったのかしら」
その時、悟はあの悪魔のような形相になった。口もとに気味悪いうす笑みを浮かべながら、言葉使いもいつの間にか男になった。
「まさかボクを忘れたんじゃあるまいね。想い出せないのなら、この傷を見れば想い出せるだろう」
そのとたん、彼女は急におびえ始めた。悟が左腕のそでをまくりあげ、あらわに肌を出したその左手首の傷跡を見て……
「あ。あなた、ま、まさかあの夜の?!」
狼一号
智子の頭は混乱した。今、眼の前にいるニューハーフが、あの夜の男とダブってしまい、落ち着こうとしても心は震えるばかりだ。
「想い出したようだね。そう、この傷は五年前、あの暗い道であなたの自転車とぶつかった時にできた傷だ」
五年前……?
悟は彼女のレイプのことを言ってるのか?!
「その時あなたは、ぶつかったことを懸命にわびながら、ボクのケガの手当てをしようと、自分の家が近くだから連れて行こうとしたね。その時のボクは塾の帰りで遅くなってしまったけど、あの塾での問題がなかなか解けず、ムシャクシャしていた。欲求不満だった。そこへあなたの自転車とぶつかった。もちろんお互いの不注意だった。自転車から倒れたあなたの体を見て、思わず獣の本能がむき出しになった。だからボクはあなたを!」
「いやぁああああーッ!!」
巨根
震えていた彼女が急に叫んだ。そして、そのまま逃げるように走った。駐車場の近くでざわめく人びとの中、国道に面した場所を飛び出す。スピードを出し過ぎていたダンプカーが迫って来た。パァーンと警音をけたたましく鳴らすダンプカーは、急ブレーキを踏んだが、時すでに遅く……!
「智子ォオオー!!」
即死だった。あまりにも急だった。あまりにもひどすぎた。五年前の出来事がこのような惨劇をもって終るなんて、誰が想像し得ただろう。
勝は考えた。五年前、彼女を犯したのは誰なのか……
当時は彼女の辛い気持ちを察して、問いただすようなことはしなかった。否、そっとしてやることだった。そしてようやく立ちなおった頃、すっかり忘れてしまった。
それから三年後の一年前、今度は勝が悟に犯された。あの細い体にしてバカ力は、勝だけじゃなく彼女にもおよんだのか。
紅蜘蛛
悟は兄の愛を得るために、彼女を犯したと言うのか……
しかし最近になってなぜ、悟はそのことを彼女に告げるように話したのか。悟は兄の愛を得るために、悪魔に魂を売り渡してしまったのか!
それまで弟・悟をおそろしいと思った勝は、怒りと憎しみに燃えた。
「あいつを殺してやる!」
思わずそう叫んだ。勝はいつしか弟・悟のことを、<あいつ>と呼ぶようになった。
そこは彼女の家で、告別式場になっていた。あれから一週間経った。彼女が交通事故に遭った時、あいつはまるで何事もなかったかのように早ばやと去って行ったのだ。勝たちの幸福をメチャクチャするために、あいつは立ちはだかったのだ。
そう確信して、近くに停めてあったクルマに飛び乗り、あいつの姿を求めて勤務先へ行った。だが、勤務先のクラブはすでに辞めていて、もう二週間になると言う。
と、すれば、あそこだ!
D10
E岬にちがいない。
いつしか嵐の夜になり、海岸国定公園でクルマを乗り捨て、激しく降る雨と強く吹く風の中、E岬の先端に立っているあいつの姿を発見した。
「悟!」
これが、この物語の冒頭シーンだった。
「課長!高見さんと西崎さんは、どうなるのですか」
逮捕失敗の報告を受け、いつもは、もの静かな正美も落ち着いてはいられない。
「自力で脱出してくれていればいいのだけど・・・」
花痴
「まさか弟を取り戻せなかった事を恨んで高見さんと西崎さんを・・・」
「正美ちゃん!大丈夫よ!あの高見兵吾が一緒なのよ。どんな事をしても生きて戻って来るわよ」
「菊枝さん・・・・」
「高見兵吾を信じるのよ」
その高見たちは、やっとの思いで逃げ込んだ山中にまだいた。
日もすっかり落ち、頼りは、月明かりだけである。
だが、運よく今夜は、満月
福源春に近かった。
それにそそり立つ木々の枝もまだこの寒さで葉をつけていない。
遮られるものがない月明かりが、惜しみなく二人の行く手を照らしてくれていたまではよかったが
「西崎!さっきここを通らなかったか」
「そう言えば・・・・このコーヒーの空き缶、高見さんが足を取られて転びそうになったものですよ」
どうやら先ほどから同じ場所をぐるぐる回っていることに気づき立ち止まった。
「道に迷ったようだな」
「夜明けを待ちますか」
「いや、まだ油断はできない。
それに万が一、杉さんたちが真二の逮捕に失敗し、奴らも健太を救助できなかった場合
必ず俺たちを殺すために戻って来るはずだ。真二たちは、山に慣れている様子だ。
蒼蝿水
できるだけ真二たちから離れる事が先決だ。西崎!大丈夫か。まだ歩けるか」
「はい。大丈夫ですよ」
「よし、もう少し行ってみよう」
そう言ってからも高見は、真二に痛めつけられた西崎を気遣うように何度も声を掛けてくれた。
こんな時の高見の目は、殊更優しい色をしている。
実のところ、山中の険しい道を歩くうちに真二に暴行を受けた西崎の足は、痛み出していた。
思わず高見の優しさにすがりたくなった。
だが、今の自分は、生きていく意味さえ見失っている。
高見さんの優しさに甘える資格など・・・・俺にはない。
SEX DROPS
西崎は、痛みを隠して歩き続けた。
そして、二人は、更に奥深く入って行った。
四月とは言っても山中は、夜になるとまだまだ冷え込んで来る。
「西崎・・冷えるよな」
「そうですね」
「すまなかったな。島を信じたばかりにおまえまで巻き込んでしまってさ」
「高見さんのせいじゃないですよ。俺も賛成しましたから」
「けどさ。あの時、何でいつものように単独行動に反対しなかったんだ」
「別に・・・理由はないですよ」
「そうか」
言葉も途切れ、二人は、また黙々と歩き続けた。
三體牛鞭
その内、西崎の歩みが少しずつ遅れがちになって来ている事に高見は、気づいた。
「大丈夫か」
「すいません。少し休んでもいいですか」
肩で息をしながら西崎が珍しく弱音を吐いた。
足の痛みだけではない。殴られ蹴られた体中のあちこちが、所構わず痛み出していた。
それに加え、睡眠不足から来る疲労も重なって足を止めた途端、西崎は、ふらつき高見の腕に思わずすがった。
「西崎!」
「すいません。ちょっとふらついただけです」
すぐに高見から離れようとする西崎の体を抱き寄せながら
「悪かったな。少し休もう。ちょっとここで待っていてくれ。どこか休めそうな場所を探して来る」
急いで辺りを見渡し、休めそうな場所を物色するため高見は、駆け出した。
「西崎、いい場所が見つかった。ほら、俺につかまれ」
三体牛鞭
西崎に肩を貸してやりながら何とか大木の根元に座らせると高見は、西崎の顔を覗き込んだ。
「派手に真二に痛められたからな。どこが痛むんだ」
「あちこち・・・」
「あちこちって・・・」
「いえ、こうしていると大丈夫ですよ」
「本当に大丈夫なのか」
「ええ。それに第一、大丈夫じゃないって言ってもこんな山の中じゃどうにもなりませんよ」
「そりゃそうだけどさ。し、しかし冷えるな。体が冷えると余計痛むんじゃないのか。
西崎・・・もっとくっついた方がいいよな。その方がお互い暖かいしさ」
「俺は・・・いいです」
「かっこ付けてる場合かよ。風邪引きそうだ。おまえが嫌でも俺は・・・・」
「わっ!高見さん!何するんですか。イテッ!」
「悪い悪い。大丈夫か」
本気で心配してくれているのかどうだか、高見は、自分の肩を西崎の肩にぴったりくっ付けるとにんまり笑った。
三鞭粒
「こうすれば・・・ほら!さっきより暖かいだろ」
右手を西崎の背に回すと更に引き寄せ、痛む体を擦ってくれた。
「いいですよ」
「遠慮するな。兄弟だと思えばいいだろ」
「え」
「あんな悪人の今井も俺たちと交換に弟の健太を助け出したくて必死だ。
兄弟って・・・そんなもんなんだろうな」
「俺は、兄弟がいませんので分かりませんが」
「俺も同じだ。おまえ・・さ。確か子供の頃に両親が続けざまに亡くなったって言ってたよな」
「ええ」
「俺も同じようなものだった」
「高見さんもですか」
「いや、おまえよりもっと悲惨だったかも知れないな。
親父は、ある日突然蒸発。
男根増長素
それっきり行方不明だ。続けてお袋も病死した。
俺は、一人ぼっちになって毎日死ぬ事ばかり考えていた。生きて行くことに疲れていたんだ。もし・・・兄弟でもいれば少しは、救われただろうな」珍しく遠い目をして高見が語る。
「高見さんも・・・苦労したのですね」
「まぁな。だから自分の家族が欲しくてさ。玲子と結婚した時は、人生で最高の幸せだったよな」
「だったら・・・どうして別れたのですか。みゆきちゃんまでいたのですよ」
「どうしてだろうな。俺が、結局身勝手だったんだろうな。
バカだよな。自分の手であんなに求めていた家庭を壊してしまった」「今からでも遅くはないですよ」
「覆水盆に返らずって言うだろ」
「そうでしょうか」
西崎は、突然口を閉ざしてしまった。
西崎が、誰の事を言っているのか。高見には、よく分かっていた。
「西崎・・・」
あれから傷に触れるようで避けてきた人の名を高見は、口に出した。
「今日子さんたちの事を言っているのか」
「よく分かりましたね」
「当たり前だろが。ひとつ聞いてもいいか」
V26
- 2008/08/22(金) 19:24:46|
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母親に「あんた、すぐ黙ってどっか行くでしょ」と、高校に入学したと同時に無理矢理に携帯電話を持たされた。
荒牧は携帯を充電器に置いてしまうと、どうにもその存在を忘れてしまいがちだ。
花之欲
一昨日からそうしたまま、着信もメールもチェックせずに今日も駅まで来てしまった。電話を携帯し忘れた事に気付くのは、こんな風にいつも駅か学校だ。取りに帰ろうと思った事などない。面倒臭い。取りに帰る事が、ではない。携帯電話と言う存在そのものが、だ。
バスを降りた荒牧は、国道にかかった歩道橋に乾の姿を見つけた。白いイヤホンを外して呼びかける。
「カンちゃん!」
しかし、乾は気付かずに階段を降りて行く。
「おい!乾!」
ちょうどダンプカーが通って、荒牧の声は乾に届かない。乾を飲み込んだバスは駅へと走り出した。
三・四時間目の体育の授業に備えて男子らが着替える教室に、荒牧が現れた。
「お、シャケ来た」
関口が言うと特進のクラスメイトは一斉に荒牧を見た。
「もーう、また眼鏡かけてない」
宇佐美の口調は責めるようだった。
視力が弱過ぎる荒牧は裸眼だと黒板が読めない。出席番号一番の最前列の席でも授業中にノートが取れなくなる。宇佐美にノートを取るよう頼んでおいて、「まとまってない」などと文句を言う。第一、いつもにも増して行動がいい加減になって、壁に激突
美人豹
するなどして怪我もしかねないからだ。
「さっきさ、乾、バスに乗るの見たけど。どうした?」
開口一番に言った荒牧に、教室は静まり返る。
「シャケ、今日は何で遅刻?」
「ああ、俺、今日からさ…」
やはり責めるような宇佐美に、荒牧は自分の顔を指差しながら何やら言いかけたが、関口が遮る。
「お前、大事な時にいないな」
「え?」
ベランダの手すりに寄りかかると、湿気でべたりとした感触がした。蒸し蒸しした空気が逆撫でをする。後藤はあからさまに苛立って、湿気でまとまらなくなった髪を指先でいじった。
ついさっきの一部始終は、後藤が事細かに説明をした。荒牧は眉間にしわを寄せて黙って聞き、ようやくうなずいた。
「…そうか」
「うん…」
「で?」
「え?」
「俺にどうしろと?」
「…は?」
「確かに、みんなの前でそういう絡まれ方されたカンちゃんも気の毒だけど」
「…」
「すぐ帰ったりすんのは、いい加減どうなのよ」
「…」
「たまたまいなかった時の事まで言われてもさあ、知らねえっつの」
「…」
「俺、別に乾のマネージャーじゃねえし。そこまでフォロー出来ない」
荒牧が畳み掛けるのを、後藤はしばらく黙って聞いていたが、静かな声色で、しかし感情的に言った。
「…冷たいのな」
超級脂肪燃焼弾
「「冷たい」?」
「何でそんな言い方すんの?」
「じゃあどういう言い方なら良いんだよ」
「「マネージャー」って…、何言ってんの?普通に友達じゃん」
「「友達」ねえ…」
「何だよ、違うのかよ」
後藤が見据えると荒牧は黙った。目をそらして梨畑を眺める。友情と正義を燃料に、後藤は続けた。
「最初、色々気ぃ使ってやって「シャケ、優しいじゃん」とか思ったのに」
「…」
「「一緒に怒れ」って訳じゃないけど、それはないだろ?」
「…」
「世話焼いたり放ったらかしにしたり、どっちだ。中途半端だな」
後藤の言葉を聞いているのかいないのか、遠くを見ながらしばらく黙りこくっていた荒牧がようやく言った。
「後藤」
「何」
「俺が何で最初、乾の世話焼いたかわかるか」
後藤は荒牧を怪訝そうに見る。今度は荒牧が後藤を見据えると、感情のかけらもない凍り付くような顔で吐き捨てた。
「こういう下らんのが嫌なんだ」
「あ?」
終極痩身
「乾の為じゃない。自分の周りでこういう面倒臭ぇ事、起こされたくないだけだ」
「…」
「うぜえんだよ、正直」
西の空の彼方から梅雨雲が迫っている。梨畑の上を生暖かくて湿った風が撫で付けるように渡って、荒牧と後藤に届いた。
そんなに“平穏無事”が好きですか、ああそうですか。
確かに荒牧の言い分は「下らん諍いは無しが良い」と一貫していた。しかし、後藤はあっと言う間に顔を上気させ、怒りを抑えて震える声で言った。
「…あー、私が悪かったよ」
「…」
「お前の事、勘違いしてたわ」
「…」
「ははっ、何でお前の事、良い奴とか思ったんだろ」
「…」
「ある意味、バスケ部よりムカつくわ、お前」
後藤は不敵に笑って、荒牧の胸に拳を食らわせた。鈍い音がして、荒牧は激しく咳き込む。
「いっ…てぇな」
御秀堂
荒牧に一瞥をくれると、後藤はベランダを出て行った。
胸をさすりながら荒牧はひとしきり咳き込んで、しばらくして落ち着くとベランダの手すりにもたれて溜め息をついた。
荒牧の視界に、遠くの雨粒の一つ一つまでがはっきりと映る。校門の脇の池に、幾重もの輪が生まれる。雨の匂いがしていた。
雨の音に混じって、何やら体育館の方から騒がしい声が聞こえる。
後藤は雨のそぼ降る中庭を眺めながら、代替授業の保健体育をぼんやりと聞き流す。
体育の授業を校庭で予定していた特進クラスの女子は、普通科五組の教室へ移動していた。
特別進学クラス、つまり一組は、通常、二組と体育の時間を合同で行った。
しかし年に何度かある個人面談の時期と重なり、各クラスで時間割が変更され、この日はたまたま五組と合同になっていた。
五組は、あの目黒由貴と多くのバスケ部員がいるクラスだ。今頃、体育館では荒牧たちが目黒たちと授業を共にしている。
韩国瘦身一号
後藤は、荒牧が乾を突き放すような事を言ったのを、どうしても飲み込めないでいた。「バスケ部よりムカつく」奴のはずがない。ふざけたりしながらもどこか冷静で、他の男子に比べて大人びている。そんないつもの荒牧よりも、さっきの言い草はずっと感情的で、むしろその方が年相応な感覚だった。
後藤が染色体の講義を聞き流しながらその理由を考えていると、賑やかな体育館の方からひと際、大きく歓声が上がった。直後、誰かを怒鳴る体育教師の声が響く。
しばらく間を置いて、体育教師が男子生徒の腕を引きながら廊下を通る。男子をよく見ると目黒だった。五組の女子が騒ぎ出す。
「今の、目黒?」
「え?何かやらかした?」
「また?」
どうやら体育館で何かが起こったようだ。
授業後、後藤は五組の女子が口々に噂をするのに聞き耳を立てた。
「何かね、目黒が特進の奴を殴ったんだってさ」
後藤の胸騒ぎが的中した事がわかったのは教室に戻った昼食時だった。男子らも戻って制服へと着替えているところだ。
そこに荒牧の姿がない。
韓国痩身1号
宇佐美がどっぷりと落ち込んだ様子で語り出した。
「俺ら、幼稚園から一緒でさ。ずっと仲良かったんだ…。小学校からはミニバスも一緒に入部して…」
───さかのぼる事、数時間前の三・四時間目。特進クラスと五組の男子らは体育館に集合していた。
体育館は、外で降り出した雨の音と、バスケットボールをドリブルする床の音に溢れていた。扉を開け放しても閉め切っても、空間に湿気が充満する。
宇佐美が漫然とボールを壁に打ち付けていると、荒牧が宇佐美の背後に近寄って来て耳元で言った。
「ウサ」
「ん?」
「俺がボール持ったら走って」
宇佐美は荒牧を振り返り、大きな目をますます丸くして聞き返す。
「…え?」
「スリー」
痩身一号
「…」
「見せてよ、久々に」
荒牧が口の端で笑うと、宇佐美は途端に目を輝かせ、体操着のジャージのズボンを膝までまくり上げた。踵を踏んでいた体育館履きも丹念に靴紐も結び直した。チーム分けの色違いのベストの中で、宇佐美の華奢な身体が泳いでいた。
荒牧は、出席番号順にチーム編成された他の三人を呼び寄せると、手を掲げて言った。
「“スラムダンク”読んだ事ある人ー」
三人全員が挙手をする。
「じゃ、みんなアレね。“花道”やって」
荒牧は有名なバスケ漫画のキャラクターの名を例に、つまりは「ひたすらリバウンドを取れ」と指示を出した。
特進の五人の中では一番背が高い、という理由で最初のジャンプボールは荒牧が担った。
対する普通科チームは揃いも揃ってバスケ部だった。目黒が中央のサークルの中に入る。
目黒のポジションは五番、センターだ。ゴール下でのボールのキープ力、肉弾戦に競り勝つ体格と体力、精神力がものを言う役割である。自分の力だけを信じて疑わない目黒
痩身1号のような男には打って付けのポジションだ。
ただし、ちゃんと部活に参加していればの話。練習に参加しない幽霊部員にポジションもへったくれもない。
宇佐美は二人がサークル内に立ったのを見て、堪えきれずに笑みがこぼれた。
(何だ、この光景…。奇跡だよ…)
懐かしさに心を躍らせながら、涙が出そうになっているのを堪えた。目が潤んで視界が霞む。
体育教師の手からボールが高く上がる。目黒が素早くタップして普通科のメンバーにボールを送る。荒牧のジャンプは完全にタイミングがズレていた。
見ていた特進クラスの男子からは、荒牧をヘタレ扱いした爆笑が湧く。
「わははは、荒牧!」
「運痴にジャンプやらせるなよー」
誰しもが目でボールを追っている中、荒牧は目黒の足の上に着地していた。
宇佐美はどこへ行くのも荒牧と一緒だ。購買部で文具を買うだの、図書館にコピーを取りに行くだの、何かにつけ荒牧の後をついて行った。
「うぜえ」
蟻王 ANT KING
「むふふ〜」
「中学生女子か」
今日は連れションだ。宇佐美は荒牧との限りある学園生活をたっぷりと味わいたくて、ウザいと罵られながらも背後霊のごとく離れなかった。
荒牧と宇佐美が戻ると、特進の教室の入り口に長身の男子が立って、中に首を突っ込んでいた。
荒牧はその男子の顔を覗き込む。乾が出て来るのを待っている目黒だ。
「お…」
「あ…」
目黒も反応を示す。宇佐美も目黒を見て、思わず声を上げた。
「あれ…?珍しい…」
宇佐美が何やら言いかけたその時、教室の中央からホイッスルが聞こえた。長い音が一回、短い音が二回。
後藤の合図に、特進クラスの女子らが手に何かを持って振り上げた。男子らはただ驚いて見ているだけだ。
目黒を追い越して教室内に入る荒牧の耳に、後藤の声が飛び込んだ。
「シャケ、危ない!」
「え?」
荒牧の反応よりも早く、女子らが掲げた上履きが目黒に向かって一斉に飛んで来た。
蟻王
ちょうど目黒の楯となり、荒牧に何足もの上履きが命中する。
「いってえな!何だよ!」
荒牧がわめく中、同時に的を外れた何個かの上履きは教室のドアや上部の戸のガラスを打ち破った。ガラスは粉々になりながら荒牧の上に降る。
「わあ!割れた!」
宇佐美が驚いて叫ぶと、自分達で上履きを投げておきながら、女子らも悲鳴を上げた。
男子らはその一部始終をただ傍観し、やがて教室には失笑が起こった。
「何これ」
「あーあ…、やっちゃった」
「後藤小隊長殿、伝達!荒牧三等兵、被弾せり!」
関口が悪ふざけで言うと、
「衛生兵!衛生兵ーっ!」
「メガネ刑事、殉職!」
「荒牧、「何じゃこりゃああああ!」って言って」
軍隊モノと刑事モノのネタが入り乱れて、教室は騒然とした。
「やべ…」
特進クラスの混乱に乗じて目黒はこっそりと逃げ出す。乾は当事者である事を忘れて呆然とした。
ANT KING
「みんな、何なの!?」
宇佐美がいきり立って教室を見回す間に、運悪く担任の薮崎が駆け付けた。
「ちょっとぉ…!何してんの、荒牧!」
「…え!?俺!?」
荒牧は全身に上履きとガラスの破片にまみれまたまま、薮崎の叱責を浴びた。
精力剤
- 2008/08/22(金) 18:49:06|
- 桜花の恋情|
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八月のある週末、五人は津田沼駅前で待ち合わせた
肌がべた付くような風が吹く。駅前は人でごった返していた。
荒牧は、浴衣姿の宇佐美を見て、やはり浴衣姿で現れた後藤と二人を並べて笑う。
D10 媚薬 催情剤
「関口、これ何て妖怪?」
宇佐美と後藤は、これまた何かの妖怪のように顔を真っ赤にして荒牧に抗議した。
関口も爆笑していると、改札の方から下駄の足音が駆けて来た。
乾もまた浴衣を着ていた。深い紫色の浴衣に白い肌が映える。その場の誰もが乾に見蕩れる。
「ごめんね、遅刻厳禁なのに…」
息切れをして、肌が桃色に上気している。風下に立った荒牧に乾の甘い香りが届いた。
後藤は、自分もめかしこんでやって来た事をすっかり忘れ、
「おおう…、可愛い…」
と、溜め息を漏らす。宇佐美も顎を撫でながら満足そうにうなずく。
「カンちゃ〜ん、凄い綺麗だよ〜」
「ありがとう…。ウサちゃん、浴衣似合うねー」
宇佐美と乾で乙女チックに手を取り合ってはしゃぐ一方、荒牧はしつこくつぶやく。
「ああ、あれか。座敷童」
「しつけーよ!」
宇佐美の雷にも、荒牧はからからと笑っている。
関口は臆面もなく、乾を舐めるように眺めた。
「いやー、カンちゃん、可愛いわー。良いよー。良いねー」
「何か恥ずかしい…」
関口にまじまじと見られて、乾は団扇で顔を隠した。首の辺りまで茹で上がったように染まる。
D8
───夏休みに入って数日後の、塾の夏期講習が始まる日。乾は内心ひやひやしていた。
宇佐美から散々「シャケは私服がダサい」と聞かされていたからだ。
え、別にダサくないよ?あ、そっか、ウサちゃんが着せてるのか。
「格好良い」は褒め過ぎ?「普通」かな?私は格好良いと思うけどね…。
…でも、いっそダサかった方が良かったのかも…。
そんな些細な理由で火が消える恋もあるだろう。
何かの拍子にあっさり鎮火してくれたら…。そう願う一方で、今日も乾は密かに荒牧を見つめた。
(うん、格好良い。…かも?)
白いポロシャツが荒牧に似合っている。胸に月桂樹の刺繍をあしらったブランドは本人ではなく、宇佐美の好みなのだと言う。薦められるがまま素直に着ている様に、乾は微笑んだ。
「良いなあ…、カンちゃんは綺麗で」
後藤はうっとりと溜め息をついて、前を歩く乾の清いうなじを眺めた。荒牧は後藤の頭頂部にこんもりと渦を巻いた髪をいじりながら言う。
「いや、後藤。お前、可愛いよ」
後藤が見上げると、荒牧は真顔だった。後藤は焦って仏頂面で言う。
「お、何だよ
「ご当地キャラとして売り出したい。早々に商標登録しようぜ」
後藤は一瞬だけ照れた自分に恥じ入る。
「うん、全く嬉しくない」
「妖怪図鑑に載せて貰えるように、水木しげるに直談判して来る」
「うん、ホントしつこい」
「カンちゃん、ウサと後藤ってフルCGなんだよ。知ってた?」
「うん、いい加減にして」
D5
「目覚ましいわー、昨今のVFX」
荒牧は後藤と屈託なく笑う。何のこっちゃ、と、乾も笑った。
…良いな、ごっちゃん。
シャケに「可愛い」って言って貰えて。羨ましい。
せっかく浴衣着て来たのに、全然こっち見てくれないよね…。
乾が溜め息をついて密かに見つめても、荒牧は気付く素振りもしない。
(VFXって何だろう…)
乾は、荒牧と後藤の馬鹿馬鹿しいやりとりの意味をすっかりはき違えてまた溜め息をついた。
D10
八月のある週末、五人は津田沼駅前で待ち合わせた。
肌がべた付くような風が吹く。駅前は人でごった返していた。
荒牧は、浴衣姿の宇佐美を見て、やはり浴衣姿で現れた後藤と二人を並べて笑う。
「関口、これ何て妖怪?」
宇佐美と後藤は、これまた何かの妖怪のように顔を真っ赤にして荒牧に抗議した。
関口も爆笑していると、改札の方から下駄の足音が駆けて来た。
乾もまた浴衣を着ていた。深い紫色の浴衣に白い肌が映える。その場の誰もが乾に見蕩れる。
「ごめんね、遅刻厳禁なのに…」
息切れをして、肌が桃色に上気している。風下に立った荒牧に乾の甘い香りが届いた。
後藤は、自分もめかしこんでやって来た事をすっかり忘れ、
「おおう…、可愛い…」
巨人倍増
と、溜め息を漏らす。宇佐美も顎を撫でながら満足そうにうなずく。
「カンちゃ〜ん、凄い綺麗だよ〜」
「ありがとう…。ウサちゃん、浴衣似合うねー」
宇佐美と乾で乙女チックに手を取り合ってはしゃぐ一方、荒牧はしつこくつぶやく。
「ああ、あれか。座敷童」
「しつけーよ!」
宇佐美の雷にも、荒牧はからからと笑っている。
関口は臆面もなく、乾を舐めるように眺めた。
「いやー、カンちゃん、可愛いわー。良いよー。良いねー」
「何か恥ずかしい…」
関口にまじまじと見られて、乾は団扇で顔を隠した。首の辺りまで茹で上がったように染まる。
───夏休みに入って数日後の、塾の夏期講習が始まる日。乾は内心ひやひやしていた。
宇佐美から散々「シャケは私服がダサい」と聞かされていたからだ。
蟻力神
え、別にダサくないよ?あ、そっか、ウサちゃんが着せてるのか。
「格好良い」は褒め過ぎ?「普通」かな?私は格好良いと思うけどね…。
…でも、いっそダサかった方が良かったのかも…。
そんな些細な理由で火が消える恋もあるだろう。
何かの拍子にあっさり鎮火してくれたら…。そう願う一方で、今日も乾は密かに荒牧を見つめた。
(うん、格好良い。…かも?)
白いポロシャツが荒牧に似合っている。胸に月桂樹の刺繍をあしらったブランドは本人ではなく、宇佐美の好みなのだと言う。薦められるがまま素直に着ている様に、乾は微笑んだ。
「良いなあ…、カンちゃんは綺麗で」
後藤はうっとりと溜め息をついて、前を歩く乾の清いうなじを眺めた。荒牧は後藤の頭頂部にこんもりと渦を巻いた髪をいじりながら言う。
「いや、後藤。お前、可愛いよ」
後藤が見上げると、荒牧は真顔だった。後藤は焦って仏頂面で言う。
「お、何だよ…」
三便宝
「ご当地キャラとして売り出したい。早々に商標登録しようぜ」
後藤は一瞬だけ照れた自分に恥じ入る。
「うん、全く嬉しくない」
「妖怪図鑑に載せて貰えるように、水木しげるに直談判して来る」
「うん、ホントしつこい」
「カンちゃん、ウサと後藤ってフルCGなんだよ。知ってた?」
「うん、いい加減にして」
「目覚ましいわー、昨今のVFX」
荒牧は後藤と屈託なく笑う。何のこっちゃ、と、乾も笑った。
…良いな、ごっちゃん。
シャケに「可愛い」って言って貰えて。羨ましい。
せっかく浴衣着て来たのに、全然こっち見てくれないよね…。
五便宝
乾が溜め息をついて密かに見つめても、荒牧は気付く素振りもしない。
(VFXって何だろう…)
乾は、荒牧と後藤の馬鹿馬鹿しいやりとりの意味をすっかりはき違えてまた溜め息をついた。
普通科チームはバスケ部の幽霊部員とは言え、あうんの呼吸を持っていた。次々にパスが回り、ジャンプボールから十秒経たない内にゴールを決めた。“チーム・ガリ勉の特進なんて相手じゃない。
特進クラス男子がゴール下からスローインする。ボールは手を挙げていた荒牧へ渡った。荒牧は緩やかに、しかし確実にボールをドリブルして前進する。
やはりその場の誰しもがボールを持った荒牧を見ていて、宇佐美が相手側のコートへ静かにダッシュしたのに気付かない。
パスを求める手前の特進の男子をスルーして、荒牧は遠投をした。
「バカ、どこ投げてんだ」
VigRx
体育館の上部のランニング走路で見ていた関口が呟く。
ようやく宇佐美の動きに気付いたのは目黒ただ一人だった。
「…戻れ!」
目黒が叫ぶ。普通科が戸惑う間に、センターラインを遥かに超えた箇所にボールが落ちる。そのままエンドラインから出ると思われたボールに、宇佐美があっという間に追いついた。二、三度ドリブルをしたかと思うと、美しいフォームでレイアップシュートを決めた。
「おおー…!」
関口は特進クラスの他の男子らと試合を見下ろしながら驚いて唸った。
いわゆる“速攻”の流れだった。教師と生徒らが唖然として見ている。コートに一人だけ手を叩く者がいた。荒牧の手拍子だ。
「早くしてよ」さっさとリスタートしろ、の意味だ。荒牧の目には、いつもと違った輝きが宿っていた。宇佐美も満足そうににんまりと笑った。
教師が笛を吹く。普通科のチームは顔を見合わせて、ようやく荒牧と宇佐美が経験者だと悟った。試合が再開される。
巨人倍増
RU486
ゲームは当然、普通科が押した。点数に大差が開く。
しかし荒牧にボールが渡ると、宇佐美が着実に得点を重ねた。
荒牧は、無言で緩やかに左手でドリブルをしながら、右手では遠くを指差す。荒牧と目が合った特進の男子が慌ててその通りの場所に走ると、荒牧は逆サイドに構えた宇佐美を見ないままパスを出す。
宇佐美は、荒牧からのパスを決してこぼさない。長身のバスケ部員の下を低くくぐり抜けると、フェイントをかけながらフックシュートを決めた。
ボールを持った荒牧がドリブルでゴール下に切り込む事もあった。すると宇佐美は静かに外角へ出る。
荒牧はシュートするかのように踏み込んで、外角にいる宇佐美を見ずにパス出す。ノールックパスに特進の男子が湧く。
荒牧からのパスを受けた宇佐美はボールを両手で持つと、一瞬ゴールを静かに見据え、スリーポイントシュートを打つ。美しい弧を描いて、ボールはリングに触れずにバスケットを通った。見ていた特進クラスはもちろん、普通科からも歓声が上がった。
コートの中でただ二人だけは宇佐美のスリーポイントシュートを見て失笑していた。
「相変わらず…」
目黒が呟くと、横にいた荒牧も
「女投げだけどな…」
と、補足して吹き出した。
男子は通常、フリースローやスリーポイントシュートはワンハンドで打つ。しかし腕力のない宇佐美は、昔からツーハンドだった。それを周囲は「女投げ」と揶揄した。荒牧と目黒は顔を見合わせて笑った。
荒牧の側に宇佐美が駆け寄って、二人はハイタッチをした。宇佐美は入学してから体育の時間では見せた事のない笑みを満面に浮かべていた。
MaxMan
荒牧から宇佐美へ、という流れもいい加減にマークがきつくなり、普通科にファウルがたびたび取られるようになった。荒牧も宇佐美もフリースローは決して外さなかった。
「へー…」
ランニング走路で関口はいつしか歓声を上げるのも忘れて試合に見入った。こんなに無駄のない動きをする二人、特に荒牧の姿は、関口の記憶にない。
ただの体育の時間に、そこそこの良い試合が行われた。教師も笛をくわえたまま静かな白熱具合に驚いていた。
───後藤は、宇佐美が語るのを、驚きながらも冷静に聞いていた。
「で、何でシャケはキレられたの?」
礼拝堂から微かに賛美歌が聞こえて来る。
遅刻して誰もいない教室に着いた荒牧は、“あめつちにまさる”を遠くに聞きながら、窓際の最前列の自分の席に深く腰をかけ、眼鏡を外して机に突っ伏した。
教会では日曜の朝に礼拝が行われるが、この村上学院高校ではその代わりにと月曜日の一時間目は丸々、礼拝に費やされる。全校生徒が集まり、宗教科の教員による講義、聖書の朗読、賛美歌の斉唱などをする。
しかし、キリスト教という観点でこの高校を選んだ生徒は少ないと思われ、その証拠に多くの者が居眠りをしている。
威哥王
生徒も教員も出払った静かな校舎に足音がこだました。
下駄箱に駆け込んだ乾は腕時計を見やり、礼拝への参加を諦めて足取りを緩める。
初めて入る二年生になった自分の教室。乾の足取りは更に重くなる。
ドアから教室を覗くと、前方には既に誰かが礼拝をサボって居眠りを決め込んでいる。誰もいないと思っていた乾は教室に入るのをためらった。
しかしすぐに、その席を男子の出席番号一番の席だと理解した。その人物の後頭部から束になった髪が寝癖になって飛び出ていたからだ。
果たして見覚えのある眼鏡が机に置いてある。
「…荒牧くん、おはよ」
か細い声荒牧の顔を覗き込んだ乾の影で、荒牧は目を覚ました。眼鏡をかけて伸びをする。
「…あ。おお、乾さん、来たかー」
「礼拝、行かないの?」
「ちょっと遅刻して。どうせ寝てるしさ。…結局、先週は一度も来なかったじゃないすか」
「うん、へへ…」
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乾はぎこちなく笑った。茶色い髪が陽に透けてきらめいていた。
静かなはずの教室から、男子生徒と女子生徒の笑い声が聞こえて来て、教師は足を止めた。
勢い良く二年の特進の教室の引き戸が開かれる。
「おー、お前ら何やってる。良い度胸してるな。礼拝の時間だろうが!」
「礼拝の時間も単位の<内なのよ」
職員室の端で特進の担任・薮崎は小声で、しかし怒りしか感じられない口調で荒牧と乾を諭す。
荒牧はあくび混じりに、ふぁーい、と、曖昧な発音で返事をする。
「荒牧!ちゃんとして。ネクタイもしっかり締めて。だらしない」
「はいはーい」
「校章バッヂもないなら買いなさい」
「えー、ヤダ」
「もうね、普通科と違うんだから、あんたら気を引き締めてちょうだい」
「すーいませーん」
徹底的に荒牧がふざける一方、乾はただ黙っている。
「乾さん、休みがちだと心証悪いよ」
「…はい」
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「髪も頭髪検査までに黒く戻して。内申に響く。推薦枠やらないよ?」
「…はい
荒牧は職員室から教室に戻る廊下を、上履きを引きずるような緩慢な動きで歩いて行く。その後ろにはうつむいた乾が続く。
「おーこらーれたー。あーあ、しんどい」
「…」
ネクタイを緩めたり、伸びをしたり、呑気なフリをしながら荒牧は乾の様子を観察する。
怒っているのか落ち込んでいるか、先週会ったばかりの少女の仏頂面を、どう解釈して良いかわからない。
教室に戻ると乾は間髪入れず自分のカバンを持って教室を出て行った。
「あれ、乾さん?」
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「…」
荒牧の声に乾は何も答えない。
乾の姿を初めて見た特進の生徒らも、ようやくその様子に気付いて彼女の背中に視線を集中させ、そこここで不穏に囁く。
後藤は、それ見た事かと自慢げに言い放つ。
「…ほら、な?」
関口はニヤニヤとせせら笑って
「うーん、アウトロー」
と、茶化し、
宇佐美は
「うわー、今のはカンジ悪いかも」
と、後藤に追随した。後藤は更に追い込む。
「何しに来てんだよ」
「…」
さすがに荒牧は言葉もない。
二時間目の後は二十分間の長めの休み時間。
校門に臨む特進の教室のベランダで、後藤は乾の話を荒牧に言って聞かせた。
「中学の時は“ヤリマン”とか“性病持ち”とか言われてた」
「うわ、キッツい事言うな、お前」
「私はそういう事は言わ
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ないよ。一部の奴らがね」
「へー。せっかくの美人が気の毒に」
「大学生と付き合ってるとか噂があってさ。可愛いからやっぱモテるし、妬みもあっただろうけど」
「…」
「中学の時もちょっと登校拒否っぽくなってて」
「…」
「でもさあ、そもそも態度が悪いよ。いっつもあんななんだよ」
「ある事ない事、言われてたらああにもなるんじゃん?」
「…」
ベランダの窓の近くを関口が通りかかる。
「あ、ねー、関口くーん」
後藤の呼びかけに、人懐っこい笑顔で関口が窓から顔を出す。
「乾がイジメられてるって、どんな?」
「んー、又聞きだけど、バスケ部がどうのこうの」
「ああ、バスケ部か」
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バスケ部、という関口の発言に後藤も納得をした。
校内でも素行の悪い生徒が集まるとされるのが男子バスケ部だ。女子を使って大学生相手に美人局をやってるとか、大麻の売買をしてるとか、ロクな噂を聞かない。年に何人か退学者が出るが、バスケ部員もままいる。
その時、後藤も関口も気付かなかったが、荒牧は無言ながら、片方の眉の端をぴくりと動かし、反応を示していた。
関口は続ける。
「何だっけ?黒…、黒田とかいう…」
「…目黒?」
荒牧の補足に、関口がうなずく。
「あー、それそれ。目黒とかいう奴がいて、何とかかんとか」
後藤も呆れた様子で言う。
「バスケ部、タチ悪いからな。停学とかしょっちゅうでしょ」
その後も乾は、登校したり欠席したり、遅刻したり早退したりを繰り返す。
もうすぐ五月になろうという季節の中、教室では確実に浮いている存在になっていた。
SPANISCHE FLIEGE
- 2008/08/21(木) 12:26:31|
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はぁ〜、何度目かわからないため息が漏れる。
今日から3日間、鬼のような撮影スケジュールが組まれている。
人の出入りも激しいし、カメラマンは気性が荒くて有名な人だし、モデルどもは高飛車だろうし、何と言っても、まだまだ下っ端のわたしは、上司の使い走りに専念しなくてはならないし。
ProExtender ベニス増大システム
なのに。
わたしは、今日の夜、カレにフラれることが確実に決まっていた。
「こんな日は、休暇をくれてもいいんじゃない、花菜ちゃん」
小さく独り言をつぶやきながら、重たい体を引きずるようにして、やっとたどり着いた恵比寿にある撮影スタジオ。
ときは9月。
まだ早朝7時だからこそ、少しだけ秋らしくなった涼しい風が吹いているけど、今日も残暑は厳しいに違いない。
「石川ぁ〜!」
はぁ? 誰かが大きな声で呼んでいる。
Supra VX
「石川花菜(いしかわ かな)!」
はっ、として、口に挟んでいたタバコを、空き缶に投げ入れた。ジュッと火の消える音がした。
「はいっ、なんでしょ?」
振り向き様に答えると、目の前に上司でアートディレクターの桐野浩平(きりの こうへい)が、深いため息とともに立っていた。
「起きてるか? ちゃんと。スタッフに段取り、説明してきたから、お前も進行していけよ」
ちらりと、コーヒー缶に目を向ける桐野は、嫌煙家だ。
「あ〜、すみません。手持ち無沙汰で、つい〜」
言い訳がましく吸い殻が入ったコーヒー缶を見た後、桐野に向かって、にこりと笑いかけた。
得意のごまかしポーズ。
「ま、いいけど。ほとんど、カメラマンが仕切ってくれるとは思うけど、お前も勉強しておけよ、ちゃんと」
「はぁ〜い。大丈夫で〜す。会社から出ると、新鮮ですよね〜、良かった、桐野さんの部下で〜。あ、お茶、飲みます?」
大量に用意したお茶やジュースのペットボトルから、桐野が気に入っているという薬草茶を紙コップへ注ぎ手渡す。
桐野は、嬉しそうにそれを片手で受け取り、開いた片手でわたしの頭をくしゃりと撫でた。
Supra PE?早漏のキラー
それが半年前。
30になったばかりの桐野は、背の高いスポーツマンといった骨格、でも対照的な線の細い印象のクールな顔、人目を引くタイプ。
今日、集まっているモデルの男の子たちにも負けてないな。
そして桐野は、いつもわたしの髪をかき回すように、くしゃりとする。
ときどき、ドキッとするけど。
でも、今日は、どうでもいい。
「よし、いつもどおり、弾けていけよ。石川」
にっこりと笑う桐野へ、わたしは元気よく、は〜い、と返事をした。
っていうか、弾けて、ってどうなの?
某ファッション誌が、創刊する季刊誌の撮影が始まった。
雑誌は売れない、と言われて久しい中、新企画立ち上げに社運を掛けた出版社は、わたしの勤務する制作プロダクションへオファーしたそうで、社長はその場ですぐに快諾。
SUPERFATBURNING(超級脂肪燃焼弾)
その日から、編集者の企画意図に合わせて、ページネーションやデザインベースを整え、モデルを用意し、カメラマンを抑え、スケジュールを調整し……、とにかく山のような業務に追われていた。
制作プロダクションへ就職した当時から、この忙しさは想定済みだったし、それをやりがいにも感じていた。
だから、この半年は、カレとは週に1度か2度、夜ウチに来てもらって会うだけでも精一杯だったけど、カレも同じような仕事をしていたから、そのことにお互い不満はなかった。たまに休みが取れると、二人で必ず遠出してたし、カレは車で迎えに来てくれてたし。
そう、フラれるのは、別の理由。
まだ本人の口からは聞いていないけど、カレの心がここにないことくらい、すぐに気づいた。わたしはべた惚れだったから、カレの一挙手一投足でなんでもわかるほど、カレマニアになっていから。
ストロボに浮かび上がるモデルの姿を、暗がりからぼんやり見つめた。
「りょう、最近、売れてきたよね〜」
「CMも決まったんだってね、炭酸飲料かなんかだって」
「はぁ〜、カッコいいもんね。ずば抜けてるよね」
「でも、性格っていうか、素行に問題ありらしいよ。近寄ると食われるって」
「いい〜! 食われたい、きゃはははは」
隣に陣取るギャルモデルの声が聞こえる。今、撮られているオトコのコに向けられている言葉らしい。
SUPER VIGOR
へぇ〜、と内心思いながら、ライトの先を見た。
たしかに、きれいな顔をしている。中性的というのだろうか、大きな目と高い鼻梁、彫刻で削ったみたいな線を描く唇。少年らしさを残しながら、オトナの雰囲気がある。かなり高い背のせいか、それともしなやかな動きをしているからか。
でも、目つき、悪っ。
その目つきを差し引いても、ぼんやり眺めていられる、嫌味がない感じ。
はぁ〜。でも、全然、興味わかない。
今日じゃなかったら、もっと食い入るように見られたかもしれないけど。
わたしのカレの方が、断然、きれいだし、カッコいいし、そしてオトコらしい。
背はそれほど高くないけど。
そして、そんなモデルにも負けないような自慢のカレに、今日、最後通牒をくだされるのを待ってるわたしって、サイアク。
無性にタバコが吸いたくなった。
Spanish sex drops D8
あと、数カットでチェンジになる、今、スタジオを抜けると桐野がうるさいだろう、と腕時計とにらめっこを始めた。
げ、まだ10時前? 死刑執行まで12時間は確実にある。
はぁ〜、長いのか、短いのか、早く時間になって欲しいのか、欲しくないのか、そう自分に問いかけながらも、本心は、別れ話でもいいから、カレに早く会いたかった。
わたしのカレは、山下真澄(やました ますみ)というオンナのコみたいな名前のキレイな顔をした同級生、24歳だ。
でも、キレイな顔からは想像もつかないほど、オトコ臭い。体を鍛えるのが好きで、腕なんか相当固くて太いし、腹筋も割れていて、趣味はジム通い。どちらかというと、ぶっきらぼうなタイプだけど、オンナのコにはすごく優しい。
そこが、不安だったりもしていた。
VigRx
出会ったのは、ちょうど2年前。
大学4年のとき、制作プロダクションへ内定が出たのはよかったが、畑違いの建築課に通っていたわたしは、デザインの勉強を少しでもしておこうと、都心の専門学校のアウトスクールへ3ヶ月だけ通った。
そこで、隣の席にいたのが、真澄だった。
こういったら恥ずかしいけど、一目惚れ。
真澄は、初めのうちはぶすっとしていて、話しかけるのもためらわれた。
ちょっとした会話をするようになってからは、わたしは出来る限り最上級の笑顔で対応するようにしていたけど、真澄は不貞腐れているような態度が多くて、小学生か、とツッコミたくなることも多々あって。
で、ある日、我慢の限界がきて、とうとう、そういう態度で話しかけないでくれる? と強く言ってしまった。わたしの我慢の限界って、けっこう低いのは自覚している。
「石川さん見て、俺、きれいなコだな〜って思ってから、ずっと、あがっちゃったんだ」
今思えば、そんな嘘くさいセリフに、わたしはくらっときてしまった。
もしかして、一目惚れは自分だけじゃなかったのかも、なんて、ドキドキした。
「今度さ、ふたりだけで飲みにこう」
誘われて、さらに、心臓が飛び跳ねたけど、絶対にそんな素振りは見せたくなかったから、そうだね、とクールに答えた。
Vibrating?Condom Ring
はっきり言って、そんなにドキドキしたり、心臓が鷲掴みにされたような気持ちになったのは初めてだった。高校生のときから、わたしはカレシと呼ばれる人を欠かしたことがなかったし、それは密かに自慢だけど。
でも、真澄とは話をしているだけで、顔が熱くなるような、心臓が飛び出てしまうような、そして、切ないような、そんな感じ。それまでのレンアイが、急に色褪せるようにまで思えた。
元カレたちには失礼な話だよね、ホント。
けれど、ふたりで会うことはなかった。
わたしには、その半年前から付き合っているカレがいて、別れる理由もなかったし、真澄のことが好きだということは自分で認めてなかったし、たぶん、真澄にもカノジョがいたんじゃないかと思う。
何度か、スクールの数人で居酒屋に行ったことはあるけれど、その時は、真澄は他のオンナのコに囲まれてしまって、そこに入って行くのが無性に悔しくて、わたしは他の人とワイワイ盛り上げるだけだった。
気づくと、スクール終了が目前に迫っていた。
「今日、サボらない?」
真澄は耳元で、小さな声で言った。
スクールには幅広い年齢層の人々が集まっていて、仕事帰りの人なんかもいたけれど、圧倒的に同世代のオンナのコが多かった。
そんな周囲を見回しつつ、耳元の声にわたしはすぐに頷いた。
たぶん、わたしの顔は赤くなっていた、と思う。
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外に出ると、明るい街のネオンの奥に、ぼんやりと三日月が見えた。
東京で、月を見ることなんて稀だ、と漠然と思いながら真澄の後を追った。
夜遊びは大学時代散々したけど、クラブやバーにばかり行く友人に、わたしはどちらかというと、ついていくだけだったから、知っている店も限られていて、真澄に連れて行かれたイタリアンは新鮮だった。ふたり向かい合って、ワインを飲みながら、お互いのことをいろいろ話した。
まるで、初めての自己紹介みたいに。
「もう一軒、飲みに行こう。石川さん、お酒、強いね」
店を出てから、満腹なお腹とワインに酔った顔で、涼しい夜風に浸っていると、真澄は自然に私の手をとり、スタスタと歩き出した。
握られた手の感触が意外に骨太でゴツゴツしていて、キレイな顔とのギャップに戸惑った。
アロエ排毒養顔カプセル(ALOEVERA)
思えば、真澄にオトコ臭さを感じたのは、それが最初だった。
どきっ。
数秒遅れて、心臓が飛び出しそうになった。
握られた手を意識しながら。真澄の背中を見て黙って歩いた。
その後のバーで、何を話したのかは覚えていない。
とっくに終電は終わっていたし、夜中の3時になるとバーも終わってしまい、ふたりで手をつないだまま、ふらふらと夜の街を歩いた。
ラブホも、数分歩けばある、でもこんな時間から入れるラブホなんて、きっと薄暗くてコ汚いだろうな、なんて考えてた。それまでもオトコとの付き合い方は、ラブホ直行みたいなノリだったから。少しでもきれいなホテルを目指すなら、並んで入らなきゃならないこともある。そんなところにヘーキで並べるほどには、免疫がついていたのも確か。
それが、オトコと付き合うことだと思っていた。
アロエ排毒養顔カプセル ALOEVERA
でも、真澄は違ったんだ。
ゆっくりと話をしながら歩いて、公園へ入ると、
「ねぇ、缶蹴りしね?」
足下に転がる缶を、起用に足先だけで立たせて真澄は言った。
「はぁ? 缶蹴り、って」
「あれ? やったことない?」
にこにこしながら、聞き返され、真澄の顔に公園のライトが集中しているみたいで、目をそむけたくなった。
キラキラしてて、あまりにもキレイで。
だから、わたしは素早く走りよって、真澄の足の下にある缶を思い切り蹴飛ばした。
「あ、このやろ」
しばらくは、缶蹴りして遊んだ。それからブランコに乗ったり、滑り台を駆け下りたり、小学生みたいにふたりできゃあきゃあ言いながら、遊んだ。
「あ〜、疲れた〜。なんだよ、遊び上手だな」
わたしは大きな声で笑ってしまった。
夜の公園で遊び上手なんて言葉が出ると、いやらしいけど、わたしたちがしていたことは、全く逆のこと。冷たい空気なのに、うっすら汗さえかいていて。
「あそこ、座ろ、キューケイだ、休憩」
真澄に手を引かれて、土管型の遊具の中に潜り込んだ。ところどころ、穴が開いていて夜の街の灯りがぼんやりと入ってくる。
蟻王
コンクリートで固められた遊具の中は、ひんやりとして、気持ちよかった。
真っ暗な夜の空に、もう、三日月はなくなっていた。
そのことを伝えようと振り向くと、すぐ近くで真澄と目があった。
心臓が、ドクッと。
っていうか、止まるかと思った。
固まった筋肉を総動員してにっと笑い、三日月が、と言おうと思った瞬間。
真澄に引き寄せられ、柔らかく唇を重ねられた。
そのまま、何度も。
何度も。
暗闇の空のした、土管の遊具の中で、空が白むまでキスを繰り返した。
1−(四)
「明日は公園のロケだろ? って、おい、石川、聞いてるか?」
「はっ……」
アジスロマイシン?Azithromycin
やばい、全然、聞いていなかった。
桐野が、いらっとした表情で見ている。手にした箸で、わたしの弁当の蓋をコツコツ叩いた。
「早く食えよ。なんだよ、寝惚けてんじゃねーのか?」
「すみませ〜ん。ちょっと、トリップ」
「はぁ?」
「おとぎの国へ行ってきました。で? なんですか、お話は?」
にこりとわらいながら、お弁当の蓋をあけた。げ、揚げ物づくし、と小さく悪態を吐くと、桐野のため息が聞こえた。
「だから、明日は公園のロケだろ。午前中で終えて、またここで撮り。だから、お前はここから、モデルさんたちを案内してこい、って言ってんの」
「へ? どこへ?」
「……、怒るよ、石川さん」
「すみません」
下唇を出して、頭をちょこんと下げる。
「この前下見した公園だよ。あそこに、お前がモデルさんを連れて来いってこと」
Yohimbinum D8II (媚薬)
「げっ」
桐野の顔に、本当のいらつきが現れ、わたしは慌てて謝った。けど。
え、でも、ホントに?
深く頷く桐野を見て、わたしは、にや〜と笑うしかなかった。
そうだ、明日はロケで、しかもこのスタジオから一番近い公園は、あそこ。
たった今、鮮明に思い出していた公園だ。
桐野はそんなこと何も知らない。わたしにカレがいること以外、何も知らないだろうし、興味もないだろうと思う。呑気に揚げ物を口に運ぶ目の前のオトコが急に嫌いになった。
あ〜、真澄と初めてキスした公園に、フラれた翌日行くって、どれだけついていないの〜!
昼休憩の後も、撮影は延々と続いた。
モデルも、男女それぞれ7人ずつという大所帯で、スタイリストとメイクの仕事が最もきつそうだった。その点、ディレクターとしてきている桐野もわたしも、肉体的には楽だった。
何度か、衣装やメイク、小物のスタイリングでバックルームから呼ばれたが、たいした問題も起きず、ここにわたしがいなくてもよかったんじゃないかと思うほど。
相変わらず、ライト
性霸
の下に並ぶモデルはどのコもきれいで、つくりものの人形みたいだ。
———明日、話すから。
耳から離れない。真澄の声。
気持ちが、とっくに離れたことを物語ってる。
たった3日間で、急展開してしまった。いや、させてしまったのは、わたしのせいだ。
3日前から、何度ケータイにかけてもつながらなかった。それまでは、仕事が終われば必ずコールバックがあったのに。
いったい、何件の着信が残っただろう。
それを考えるだけで、ぶるっと震えがくる。
つきあいはじめて1年は、ほとんど、毎日会っていた。真澄は実家暮らしだったけど、週の半分はウチに泊まっていたし、ほんの少しの時間でも会いにきてくれて。わたしが忙しくなったのと同じくらいから、真澄も忙しくなって、自然に会う回数も時間も減ったけど。
WIN.ALWAYSカプセル
けど、深いつながりを感じられていたのに。
いまは、知らない人みたいだ。
夏休みが終わってから、真澄の心がここになくなったと気づいていた。態度も口調もいつもどおりで、ウチに来たときには、同じように抱きしめられて、だから、微妙な違いなんだと思う。
それを上手く言葉にできるはずもない。そして、それを我慢できるほど、わたしはオトナじゃない。
1年半続いた関係は、わたしの知らないことろで、ひび割れていて今にも崩れそうだった。白黒ハッキリさせたい、でも、決定打は何もない。
そんな中、3日間、連絡が取れなくなった。それだけのことなのに、仕事かもしれないし、親戚になにかあったのかもしれないのに、決定打を打たれたように感じた。
昨夜遅く、ケータイが鳴った。
『なんか、用、かよ?』
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真澄の声は穏やかだったが、私は耳を疑った。
なんか、用、かよ、って。なに、それ?
『なんども着信があったからさ。急ぎ?』
「べつに」
『あ? あ、そ』
無言の時間が続いた。
ここで、明るく違う話にすり替え、あっと言う間に電話を切ってしまうこともできた。でも、何も頭に浮かんでこなかった。
いま、激しく後悔しているのは、この間をつくってしまったことだ。これさえなければ、決定打はもう少し先延ばしにされたのではないだろうか。その間に、心変わりもあったのではないだろうか。
『明日、夜、いる?』
「え?」
『話があるんだけど』
「なに?」
『明日、話す』
「いま、でもいいよ。明日は恵比寿で撮影でさ、たぶん夜中になっちゃうよ。そういえば、ずっと連絡とれなかったけど、どうしてたの?」
なに言ってるんだ、と自分にツッコミを入れながら、口をついて出る言葉を止められなかった。
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「ほら、連絡、入れたのに返事がないと、心配になるじゃん」
『俺にもいろいろ、あるからさ』
お前には関係ない、ってことか。
「そうだね。で? 話しってなに?」
明るい声で言ってみた。
『だから、明日、話すから』
多少いらついた声でそう言うと、電話が切れた。
やばい、泣きそう。
容赦なく焚かれるストロボがパチパチ目を刺激した。撮影される側でもないのに、一瞬の明るさと、その後に襲ってくる真っ暗闇が、感情の深い所をついてくるように思えた。
人前で泣くことなんて、絶対、あり得ない。っていうか、ここ仕事場だし、仕事中だし。
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なのに、容赦なく、えぐるように光と闇が襲ってくる。
ちょっと席を外しますとだけ桐野に告げて、わたしはスタジオの重い扉を開いた。
逃げ場所は残念ながらトイレしかなかった。
こんなところに逃げ込む自分が情けないけどね。仕方ないよね。
トイレのドアを閉じると、明るい日差しが窓から差し込んでいた。
洗面スペースの奥に、扉があり、そこに個室がふたつ並んでいるはずだったが、そこまで入って行く必要もない。ただ、あの感傷に支配されたような空間から逃げ出したかっただけだ。
ふと見ると、鏡の前にマルボロの赤い箱と、ライターが置かれている。誰かが、置き忘れたものらしかった。
なんて、素晴らしい、と小さくつぶやいて、一本失敬することにした。
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火をつけて、煙を深く吸い込むと、少しだけ気持ちが落ち着いた。
鏡に映る自分の顔が、泣き出しそうなのに驚いた。
いつから、こんな顔していたんだろう、タバコを片手に持ったまま、蛇口を捻り、あいている片手で目に水をじゃぶじゃぶ当てた。
どうせ、メイクもいい加減だし、してなくたって同じ。
———きれいなコだなって
真澄の声が、いまだに鮮明に聞こえる。
ああ、未練がましい。
間違いなく、今日、終わる関係。そして、そんなまっただ中にいる自分を哀れんでいるのが、自分でたまらなく嫌だった。
ぷるぷる、と顔を大きく振って、水滴を飛ばし、ペーパータオルで拭き取った。下を向いた瞬間、涙が一粒だけこぼれ落ちた。
ああ、ったく、やってらんない。
もう一度、大きく深く煙を吸い込み、ゆっくりと吐き出した。
そのとき、スタジオに面したドアが大きく開かれた。
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何気なく、っていうかフツーにトイレのドアを開けて、驚いた。
うなだれたオンナが、大量の煙を吐き出しながら、蛇口からじゃあじゃあ出てくる水をぼぉっと眺めていたんだ。
「あ、ごめんっ」
俺にしては珍しく慌てて、ドアを乱暴に閉じてしまった。
なんだよ、あれ。
スタジオとかにつきものの、あれか? 幽霊?
もう一度ドアを開けると、今度は、腰に手を当てて、タバコを大きく吸い込んでいるオンナがいた。
やっぱり、オンナだ。
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ドアをもう一度見る。『MEN』って大きく書いてある。男子トイレに間違いなさそうだ。
俺、間違ってねーじゃん。なんか、慌てさせられたことが無性にムカついた。
オンナの目が、こちらを見て、なに? と言っている。睨んでるって言ってもいいかもしれない。
はぁ? 間違ってんのは、お前だろ。
「ここ、男子トイレだけど?」
俺は最大限抑えて言った。
オンナは片眉をあえると、まだ悠然とタバコをふかしている。
その態度の大きさに、むかっ腹が立ったが、こんなところで大人げないことはできない。ただでさえ、社長に素行注意と言われたばかりだ。
俺は、目つきがあまりいい方ではないし、無表情だの、冷徹だのと言われることがよくある。だから、ちょっと睨みつければ、大抵のヤツは一歩下がる。オンナなら、きゃっ、くらい言うかもしれない。
なのに、目の前のオンナは、おもむろにタバコを吸い終えると、蛇口からでる水で火をじゅっと消し、悠然とドアの方に向かってきた。
おい、待たせておいて、しかも、間違えておいて、なにも言うこと無しかいっ!
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「ちょっと、それ、持ってて?」
入り口のドアを遮るように立ちはだかってやると、オンナは眉を寄せて不機嫌そうに、は? と言う顔をした。
「タバコ」
俺が指差した方を、オンナもチラッと見た。見たが、見ただけで、軽く肩をあげ、俺の脇を通り抜けようとしている。しかも、片手でシッ、シッと払うようにしながら。
「男子トイレで隠れてじゃなきゃ、吸えないの?」
軽く揶揄ってやると、怪訝な表情で俺を見たオンナは、今度はやれやれといった風に手を広げた。顔が、このガキ、と言っているように見えた。
いちいちムカつくオンナだ。
「アンタ、口、きけないの?」
「そこにあったから、一本、もらっただけ」
「あ?」
「だから、そこに置いてあったから、一本もらったの。悪いッ!?」
なんだよ、今度は逆ギレかよ
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。
「忙しいの、どいてよ」
「はぁ? 間違って入った上に、一服の間、人待たせたのはアンタだろ? なんだ、それ?」
一瞬、キッと睨み上げたオンナは、急に、にこりと微笑んだ。
「ごめんなさ〜い。ぼけっとしてたら、間違ったみたいで〜。じゃ、これで」
目尻が下がって可愛くなくもないが、目が笑ってないことだけはわかった。そんなつくり笑顔、通用すると思ってんのか?
「だから、あれ、持ってけよ」
「だから、私のじゃない、って言ってるでしょ」
「わかんねぇな。俺、未成年なんだよ。こんな煙臭い個室に、消したばかりの吸い殻とタバコあって、仕事クビになったら、責任、とってくれるわけ?」
ただでさえ、首の皮一枚でつながってる状態なんだよ、とまでは言わなかった。このオンナがいなくなった後、ここに社長でも入って来た日には、絶望だろうな。
ま、それでも、いいけど。
ムカつくことに、オンナは、目を丸めたような顔つくりやがった。そして、くるっと振り返るとタバコと吸い殻を手に、ニヤニヤと歩いてくる。
「オトナの配慮が、足りなかった〜? ごめんね〜」
あきらかに馬鹿にした態度だ。なんだ、コイツは、いったい。
「小ちゃいことにビビってると、デカイオトナになれないなぁ」
はぁ!? と俺が言う間に、するりと横をすり抜けられた。その瞬間、オンナの目元が黒くかすんでいるのが見えた。三鞭寶
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なんだよ、化粧、崩れまくりじゃね?
「目の下、真っ黒だよ。それ、新しいメイク?」
背中に向かって言うと、オンナはビクリ、と一瞬動きを止めた。なんだ、ビクリ、って。漫画でもねーぞ、イマドキ。
くるっと振り返ったその顔は笑っていなかったから、俺は敢えて、口角をあげてにやりと笑った。
「石川〜! なに、やってんだ。あ、お前、また一服か! サボり過ぎだ」
そのとき、今日のディレクターの桐野ってヤツの声がした。体育会系って感じのオトコだ。
またもやオンナはビクリとして、今度は俺に背を向けた。変な動物みたいな動きをするオンナは、桐野に、早く来い、と引きずられるように歩き出した。
「あ、綾(りょう)くん、君、もうすぐだよ、よろしくね」
そう言い残し、爽やかな笑顔で、桐野はスタジオへ入って行った。
「なんだよ、あれ」
妙に挑戦的なオンナだな、石川、っていってたな。やだやだ、オンナは可愛い方がいいよ、石川さん。
バックルームに戻ると、俺はスタイリストからとたんに身ぐるみはがされ、次の衣装を着るように指示される。今日は何人かスタイリストがいるけれど、何故か俺の担当はオトコだ。
しかも、目がエロイ。ぜったい、ゲイだ。
「あれ〜、綾くん、これ、タトゥー?」
上腕筋を指でなぞりながら聞いてくる。
触るんじゃねーよ。
「さっきまで気づかなかった〜。へ〜、なんて入ってるの〜?」
俺はおもむろに嫌な顔をしているのに、そんなことお構いなしに、部屋にいる人間がゾロゾロと集まってくる。部屋の隅でコーヒーを飲んでいた社長は、思い切り顔をしかめていた。
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「A、Y、A? あや、って入ってるの?」
「あれ? 本名は、宮沢綾(みやざわ あや)って言うの?」
なわけねーだろう。みやざわ りょう、だ。
俺は愛想笑いもそこそこに、左腕のタトゥーをさっと衣装で隠した。口々に勝手な感想を言っているのを、無視することにした。
俺がタレントとして大々的に仕事できない一番の理由は、このタトゥーと肩から胸にかけてある刀傷のせいだと社長に口酸っぱく言われている。でも、イマドキ、タトゥーなんてフツーじゃないかと思っているし、仕方ねぇだろ、あるものは消えないんだ、と開き直っている。
消す気もないけど。
その態度がまた、事務所的には気に入らないようだ。
最近、雑誌で露出が増え、CMなんかにも出るようになったけど、俺の目的はタレントとしての成功じゃない。金になればいいんだ。仕事は選ばないし、社長には内緒でこのモデル事務所以外でも働いている。
15で家出した俺には、自分の体以外、今売れるものがない。
だから、どんなに馬鹿らしくても、笑えと言われればカメラの前で笑ってみせるし、指定されたポーズはこなしてみせる。ある意味、プロ根性だよな、と自分に言って聞かせたりしながら。1粒神
今日から3日間は、大所帯の撮影と聞かされていた。モデルが全部で15人くらいいたり、スタッフも数え切れないほどいたりして、ひとりひとりの顔なんて覚えていられない。オンナのコのモデル達が束になって声かけてきたりして、うざかったけど、今日の寝床もそろそろ探さなきゃならないから、適当に愛想を使っておいた。後腐れなさそうなのを選ばないと、社長に話が筒抜けになる可能性もある。
これも素行注意のひとつに挙げられてる。
ライトの下は滅茶苦茶熱いのに、真冬用のコートやら、ブーツやらとにかく厚着させられて、髪もわけわからないもので、がっしり固められて、俺はスタジオへ向かった。
ストロボが焚かれるとますます気温が上がり、体の中汗だくになる。ホント、肉体労働だよな。
ふとカメラマンの後ろに視線を移すと、壁際のテーブルにぼーっと肘をついているオンナが目に入った。
さっきの石川だ。
薄暗いところで、目の焦点が合ってないような顔が、まさにユーレイみたいだ。目線は撮影を追ってるフリをしているけれど、まったくこちらを見ていない。
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あんなので、いいのか? ディレクターの仕事ってのは。
あ、またタバコを掴んだ。ため息をつきながら、口にくわえるだけで、またぼんやりしるている。やる気が感じられないんだよ、目障りなオンナだ。
すると、つかつかと石川に歩みよってくる桐野が見えた。手に丸めた紙の束を持ってる。
ポカっ。
音が聞こえそうなくらい、石川は頭を殴られた。
やめろよ。おもしろいだろ。
「お、いいよ、りょう。その感じ、もう一枚」
カメラマンに褒められたじゃねーか。
慌てて、にへら〜と笑った石川の口からタバコを取り上げた桐野は、小言を言いながらも、石川の髪をくしゃりと撫でた。
花菜、って呼んでいい?」
石川にむかって、なれなれしい口調でモデルのコータが言った。俺より4つ年上のコータは、同じ事務所なので良く仕事で会うが、いつもいつも違うオンナを連れているので有名だ。
おい、おい、お前の趣味じゃねーだろ。
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石川というオンナは、化粧っ気もなく、スタッフらしいジーンズ姿だし、鼻は低くて、目が大きい、ベビーフェイスって感じ。なのに、派手派でしいモデルのお姉さんたちの間で独特の存在感を放っている。見た目だけは。
今、コータに向かって話しかけている完璧なつくり笑いは童顔をオトナに見せるコツか。年齢不詳な感じだけど、間違いなく俺よりは年上。
花菜と呼ばれた後は、きょとんとしていた。喜んでいるのか、嫌がっているのか、イマイチはっきりわからない顔だ。
ま、世間一般のオンナなら、コータに言いよられて悪い気はしないだろう。
その夜、予想以上に撮影が早くあがったので、編集者がスタッフを食事に招くと言いだしたのだ。
午後8時。
恵比寿の大衆居酒屋に都合のつく総勢30名が居並んだ。あと2日間、面子を付き合わせるわけだから、懇親を図ろうと言う訳だ。この仕事は、起死回生を狙うとかで、出版社も相当力を入れていると聞いていた。
いつもだったら、俺は、次の仕事に向かうとこたが、3日間休みを取っていることもあり、付き合うことにした。寝床も探さなきゃいけないしな、とぼんやり考えながら。
巴沙痩身果
モデルは全員参加だ。編集者と制作プロダクション、そしてスタイリストとヘアメイク。カメラマンやウチの社長など年寄りは辞退したらしい。未成年は禁酒というお触れを大々的に出され、味の薄いウーロン茶やコーラを大量が注文された。
もちろん、桐野と石川もいた。
おもしろいことに、モデルのオトコどもに囲まれた石川を桐野がときどき目で追うのが見えた。相当、気にしているようだ。かといって、付き合っている様子はない。桐野自体は、石川を気にかけながらも、モデルのひとりといい感じになっている。
あのオトコ、爽やかぶっているが、相当スケコマシだな。
なんてぼんやり考えていた俺は、人の心配の前に自分の、と気を取り直して寝床探しを始めることにした。
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寝床、というのは、その名のとおり、今日の寝る場所のこと。15で家出してから、一応、友人と住んでいることになっているが、その実は住所不定。
保証人もなく未成年が部屋を借りることは難しい。家出と当時に保護者というオッサンと決定的な決裂を果たして以来、居候生活を続けることを決めた。居候というより、放浪、か。その日暮らしだな。
ちょうど、隣にいい感じのお姉さんが寄ってきた。
間違いなく、俺を狙っている。
心の中で、お邪魔します、と言いながら、営業的態度で話しを始めると、ぴたりとすり寄るお姉さんの体温を太ももあたりに感じた。一生懸命可愛い笑顔を作って、綾くんに憧れてたの、なんて耳元で囁いている。
ふ〜ん、と軽く返事をしながら、腕のタトゥーを服の上から撫でた。
愛妻楽
DTIブログって?
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